ピリオド 終編-25
「あ〜、温まった」
亜紀が、バスタオル一枚で現れた。
「なんて格好してんだよ!」
思わず叫んじまった。が、亜紀はノンシャランな表情を浮かべている。
「懐かしいでしょ!小学生の頃は、よくこのまま2階へ駆け上がったよねッ」
「今、幾つだッ!いい大人だろ」
「たまには良いじゃない。母さんも父さんも居ないんだし」
「オレが居るじゃないか!オレを何だと思ってんだッ」
相変わらずのオプティミストぶりが腹が立つ。
「あら、アンタなら見られたって平気よ」
「なんだって?」
「何度も裸を見せあってるのよ。今さら恥ずかしがっても…」
したり顔を見せる亜紀。オレは、悲しくなった。
「そんな話、聞きたくなかったよ」
亜紀の横をすり抜けて、リビングを出て行った。
(いくらなんでも、あんな云い方するなんて)
部屋のベッドに寝ころび、天井を眺める。
──違う!
醒めていく頭に、別の思いが浮かんだ。
亜紀は、オレとの忌まわしい行為のために傷付いている。
(怨み言を云われても、仕方がないのはオレだったハズだ)
「謝ってこなきゃ」
ベッドを這い出ようとした時、部屋のドアが開いた。
「和哉、起きてる?」
亜紀が中に入ってきた。
「ああ、姉さん」
「さっきはごめんなさい。ちょっと云い過ぎたわ」
ベッドの縁に腰掛ける。おろした髪が、緩いウェーブを描いてた。
「オレこそ云い過ぎたよ。姉さんはオレのせいで、イヤな思いをしたんだから」
ベッドから身を起こし、オレは首を振った。
「じゃあ、この話はこれで終わりねッ」
亜紀の目が笑っている。挙げた手に、ビニール袋が握られていた。
「ビール持ってきたからさ。飲もうッ」
中から1本取りだし、オレの方に突き出す。思わず顔が緩んでしまった。
「まったく、姉さんには負けたよ」
受け取って半分ほど飲んだ。醒めた酔いが、またぶり返す。
「まったく、あの時のアンタったら」
「まだ、それを云うのかよッ」
1本が2本、そして3本と重ねるうちに2人共、饒舌になっていった。