ピリオド 終編-24
「ふぅ〜っ」
「姉さん、飲み過ぎだよ」
「うっさいなァ、アンタは」
時刻は9時を回った。
料理を盛った数々の皿も、用意された数本の酒も、すべて空になった。
思い出話に、たっぷりと時間をかけた送別会も終わりを迎えた。
空になった食器を、亜紀がキッチンに下げだす。
「お風呂沸いてるから、先に入ってらっしゃい」
「でもオレ、着替えも何も…」
「脱衣所に用意しといたから、それ着なさい」
「えっ?」
つまり、用意周到に計画してたってわけだ。
「…わかったよ」
バスルームに入ると、脱衣所のカゴに真新しい下着とパジャマが置かれてた。
「また、これかよ」
黒いタンクトップにドット柄のビニキパンツ。
(真剣に選んでるとはいえ…)
オレには、遊んでるとしか思えない。
「ま、いいや」
こんなことも、もうじき終わる。そして、彼の地で忘れてしまうんだ。
オレは、脱衣所から風呂場へ向かった。
「姉さん、先にいただいたよ」
バスルームを出ると、亜紀はリビングで寛いでいた。
オレを見るなり笑顔を湛えて、
「部屋のベッドに布団敷いてるから」
リビングを出て行った。
「まだ10時…こんなに早く寝れるかよ」
誰も居なくなったリビングでひとり、オレはテレビのスイッチをいじくる。──勝手に呼び出して、こんなセッティングをした亜紀の真意は何なのか。を、確かめたかった。
「なんか…ろくなの無いな」
次々とチャンネルを切り替える。元々、テレビはあまり観ないので、こんな時間帯に何があってるのかさえ分からない。
仕方なく、ニュースにチャンネルを合わせた。
だが、興味の無いことを観ても苦痛を伴うだけだ。
「止めた」
オレはテレビを消してしまった。
やがて、夜の寒さが湯上がりの身に凍みてきた。
「せっかく温まったのに、これじゃ風邪引いちまうな」
リビングの扉を閉じて、暖房を入れようとした時だった。