ピリオド 終編-23
実家に到着すると、亜紀が現れた。
「いらっしゃい!待ってたのよ」
ニコニコ笑ってやがる。さっきは、あんな電話しやがったクセに。
「ホラ、上がって上がって!」
「ああ…」
この上機嫌さは気に入らないが、ここまで来たんだ。親父とお袋に挨拶して行こう。
オレは玄関を上がり、ダイニングへと続く廊下を進んだ。
が、
「あれ…?」
ダイニングに親父もお袋の姿も無い。代わりにテーブルいっぱいに料理が並べられていた。
──いやな予感。
「親父やお袋は?」
オレの問いかけに、キッチンに居た亜紀は、にこやかな表情で答える。
「二人共、明後日の夕方まで帰らないわよ」
「ええっ!」
ビンゴ!だが、どういう事だ?
「知らなかった?松山の叔父さんの13回忌って」
そんなの聞いてねえぞ。
「法要は日曜日らしいけど、せっかくだから観光もって」
「姉さん、知っててやったんだな」
「そんな話はいいでしょ、ホラ」
こちらの怒りを軽くいなす。コイツ、知ってやがったな。
「あのなあ、明後日の午後には引っ越し業者が来るんだよ」
「大丈夫よ。朝には帰してあげるから」
強引なマイペースぶり。もう諦めた。
「わかったよ!注いでくれッ」
シャンパンがグラスに注がれた。
「よく味わってよ。高かったんだから」
そんなつもりは無かったが、亜紀と二人だけの送別会が始まった。