ピリオド 終編-17
「でも、こんな料理上手になるとはね。結婚してかなり…!」
「その話は止めてッ」
つい、調子に乗ってしまった。
「ごめん。云い過ぎた」
「ち、違うのッ!本当は、アンタにお礼を云いたくて」
「お礼だって?」
亜紀の視線は、テーブルに落ちる。
「た、竹内との件で、アンタにずいぶん助けてもらったから」
「そんなコト…」
「ううん。もし、わたしが出向いていたら、話はもっとこじれてたハズだわ。
たとえ、まとまったとしても、わたしが悪者になってたと思う」
そう云って席を立ち、リビングの床に置いたバッグから何やら取り出した。
「これ…」
預金通帳だった。
「300万入ってた。先日、手紙と一緒に竹内から送られて来たの」
「義兄さんが…」
「手紙には“金で精算出来るモノではないが、何かのタシにしてくれ”って」
様々な要因があるとはいえ、離婚を突き付けられた側が“手切れ金”を用意するとは。
「当然、その金は返すんだろう?」
問いかけに、亜紀は頭を振った。
「ありがたく受け取るわ。“新しいわたし”を見出だすために」
「何だい?新しいわたしって?」
「まだ、分からない。でも、すぐに見つけるつもりよ」
「そっか。良かったな」
オレは、少なからず安心した。
「何よ?それ」
「未だ傷心な態度なら困ったなと思ってたけど、姉さんは未来を見据えている。これなら大丈夫だ」
照れた表情がこちらを向いた。
「さ、この話はもう終わり。さっさと食べましょう」
「そうだね」
オレ逹は、冷めだした夕食をかき込むように摂りだした。
「姉さん、布団敷いたから」
食事から後片付け、風呂を済ませて、オレは寝室に寝る支度を終えた。
その間、亜紀はリビングで缶ビールを飲んでいる。
「姉さん?」
ソファでうなだれ、亜紀は眠っていた。
「仕方がないなぁ」
オレは亜紀を抱きかかえて、となりに敷いた布団に置いた。
「まったく…またかよ」
服を着せたまま寝かせる訳にはいかない。オレは、着ているシャツのボタンを外した。
寝床の上で、ブラジャーだけの上半身が露となった。