ピリオド 終編-12
店内は、いつの間にか客で賑わっていた。
目の前で繰り広げられている光景なのに、オレには遠いことのように思えた。
「和哉君!飲んでるかッ!
竹内の大声が、オレを現実に引き戻す。
「義兄さん…もうこのへんで」
「オマエが、オレの離婚を後押ししたんだなッ」
「えっ?」
なんだと。
「オマエが亜紀を唆して、オレから引き剥がしたんだッ!」
竹内は泥酔したことによって、オレに対する“本音”を吐き出した。
──なるほど。
コイツは見かけでオレを持ち上げながら、本音はまるで違ったわけだ。
悲しくなった。
こんな人間を、オレは“義兄”として繋ぎ止めようとしたのか。
これ以上、亜紀のことで悩むのは辞めよう。もう、オレの役目は終わったのだ。
結果だけを伝えればいい。その後のことは本人が決めればいいことだ。
オレは竹内を残して店を出た。
「ふう…」
自宅に帰り、シャワーを浴び終えたオレは奥の寝室に立ち入った。
「姉さん、話があるんだ」
「……」
亜紀は背を向けたまま、静かに横たわっていた。
オレは構わず、話を切り出す。
「姉さん、さっき義兄さんと話をしてきたよ」
「……」
「義兄さんは離婚すると云ってくれたよ」
「……」
変わらぬ無反応。
「郵送でも構わないから、離婚届けを送ってくれってさ」
「……」
「じゃあ、確かに伝えたからね」
これで、オレのやるべきことは全て終わった。
それから3週間後、竹内と亜紀の離婚が正式に受理された。