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『屋上の青、コンクリートの灰』
【ボーイズ 恋愛小説】

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『屋上の青、コンクリートの灰』-6

「お、朝陽。おまえ今日空いてるMD持ってきたか?」
「MD?」
 なんのことだかわからない僕に、あのなぁ、とモンちゃんは言った。
「今日買うCD。俺んとこでMDに落とすっつっただろ」
「……ぁあ!ごめんっモンちゃん忘れた……」

 昨日の石井のことで、頭からはすっかりMDのことが抜けていた。

 ああもう、石井のばか、僕のばか。ホントにばか。
 最悪だもう。


「ごめんモンちゃん……」
「分かった分かった。朝陽、お前こんくらいでしょげんじゃねえよ。たぶんMD俺の部屋にあると思うからそれ使えばいいだろ?ほら、元気出せ!CDおまえに一番に聴かしてやるから」
 ぐしゃぐしゃと、モンちゃんの大きい手で頭を撫でられた。
「モンちゃん……」

 モンちゃんの後ろに後光すら見えそうだ。
 モンちゃん、俺もし今度女の子に生まれたらモンちゃんの嫁になるよ。


「なあ、取り込み中悪いんだけど」
 早坂に、腕をトントンと叩かれた。
「……なんかさぁ思ったんだけど」
「?なに」
「……なんか石井俺らの方すげー睨んでねえ?」
 少し抑え気味の声で早坂が後ろを見やる。
 つづいてモンちゃんが後ろを向いた。
「そうか?」
「そうだって!どう見てもそうだろ!?」
「……いいじゃん別に、そんなの。ほっとけよ」

 僕は決して後ろを振り向かなかった。




 
 インターホンが鳴る。僕の指はボタンを押したままだけど、誰も出てくることはなかった。
 まあしょうがない。連絡を取ったわけでもないし、待つのもなんだか癪だし。
 踵を返し、僕は敷地を出て灰色のアスファルトに戻った。


「越智!」

 右方向。
 声のした方から、走ってくるのが分かった。
 90メートル80メートル70メートル……。早い、あっという間だ。
 100メートルくらいも距離があったのに、いつの間にか石井は僕の後ろに立っていた。
 ぜいぜいと、息を切らした呼吸音が聞こえる。
 腰を折り曲げ冷たいアスファルトに向けられていた石井の上半身は、呼吸を整えるより早く僕に向かって起き上がった。

「なにっ…、来てんの。元谷のとこは!」
「行ってきたよ。MDにも落としてもらった」
 まだうまく石井の顔が見れない。
 昨日から培ってきた僕の意地は、そう簡単には剥がれ落ちないみたいだ。
「今日は……約束してねえだろ」
「……じゃあモンちゃんとこ戻る。だいたい、別に走ってこなくてもいいだろ」
  
 僕の意地はすごく頑固だ。


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