運命ではなく宿命-1
◇運命ではなく宿命
家を出て一人暮らしを始めて3年が経った。
ロリータ服で家から出ても、もう誰にも何も言われないので気が楽だ。
あの日、不安と期待で胸を高鳴らせて行ったあの場所にまた僕は向かう。
でもあの時のような不安はもうない。
ただ期待と欲望だけが僕を支配している。
3年前、僕のクローゼットの服の量と毎週末大きな荷物を抱えて出かける僕を不審に思った両親が探偵を使って素行調査をした。
つまりは蒼介との関係もばれてしまったのだ。
きっかけは売春
これが決定打となり、両親は蒼介を告発した。
僕がどんなに了解の上と訴えても未成年との肉体関係という事実は重く、蒼介は潔く罪を認めて刑務所へと入った。
その出来事でマスコミからも注目され、一時は外出もままならない状況になったり、婚約が決まっていた姉も婚約破棄されてしまったりと家族からは白い目で見られることとなった。
そして僕は追い出されるように家を出た。
でもおかげで人目を気にすることなく好きな服を着て、月に一度の蒼介との面会にも心置きなく行けるので、むしろ告発してくれてありがたいとすら思っている。
公園に着くとすでに人待ち顔の少年や少女が点々と立っていた。
そして物色するようにスーツ姿の男がウロウロと歩いている。
僕はあのベンチに座り、携帯を取り出す。
パンツを履いていないお尻に木のベンチの冷たさが伝わってくる。
あの日もこんな風に待っていたっけ。
そして革靴の音が近づいてきて
声を掛けられた。
ほんのりと香る香水
耳に心地良い低い声
眼鏡越しの突き刺すような視線
思い出すだけで冷たかったはずの下半身が熱く濡れていくのがわかる。
梅雨に入る前の生ぬるい風が頬を撫でる。
そのまま乳首を撫でて
ゆっくりとペニスを握る
あああああ
そんな妄想に耽っているといつのまにか足元に黒い革靴が止まっていた。
ゆっくりと顔を上げる。
スリムのスーツをすらっと着こなし、相変わらず外灯の逆光で顔が見えないが、縁無しの眼鏡に調えられた髪。
そしてあの低い声が聞こえてくると僕はもう・・・・・・