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月夜と狼
【幼馴染 恋愛小説】

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月夜と狼-1

狼少年。
「狼が出た」と嘘をついた少年。

狼少女。
狼に育てられた少女。

どちらにしても、生物的にはヒトである。

狼男。
満月の日に狼に変身してしまう男。
だだし、変身後の姿は狼とヒトのあいのこ的な風貌。
狼のような人間。
狼でもヒトでもない異形。

あかずきんちゃんでも、三匹のこぶたでも、七匹のこやぎでも狼は悪者。
『捕食対象なんだから食べたってあったりまえじゃない。』といったのは母さん。
その意見も幼児相手にどうかと思うけど。


狼っぽいものを見た記憶がある。
狼は絶滅してるから犬?
まだ小学校にも上がってない頃。

すごく格好よくて、俺なんかよりずっと大きかった。
ほほをペロペロなめられて俺はくすぐったくて笑ってた。
全然怖くなかった。
しっぽをひっぱったり、背中に跨ったりしたけど、そいつは気にする風もなく、俺を遊ばせてくれた。

ただ、その記憶は家の中。
だから、どこかで外で遊んだことと混濁しているか、夢なんだろう。


そのせいか、犬が好きで何度も飼いたいと言った。
その度に父さんも母さんも反対した。
家は一軒家だから問題ない筈なのに。
俺が世話をするといってもダメ。
外で飼えるのにするといってもダメ。
こっそり連れ帰った捨て犬も朝起きたらなぜかいなかった。





「浩太、今日母さん出かけるからね」
「あ、そう。わかった」

どうせ、父さんが早く帰ってくるし、問題ない。
晩も適当に食うし。

母さんは月1ぐらいで夜出かける。
趣味の絵画の会合があるんだそうだ。
たいてい夜遅く、いつのまにか帰ってきている。

「いってきまーす」
「いってらっしゃい」

俺は高遠浩太。中学3年。私立高校は受かった。
あと県立入試を控えてはいるが。

今日はバレンタインデーだ。
本当は好きな女の子からもらうのがベストだが、そうも言ってられない。

『私、あなたのことが…』
『じつは俺も…』

そんな妄想に走れるほど現実は甘くない。
(返って疑うわ、そんな話)

2年ならいざしらず、3年の俺はホワイトデーには卒業しちまってる。
後がない。
だから、ここは指くわえて見ている場合じゃないのだ。

彼女は私立は女子校だし、県立の志望校も違う。
ここで意思表示しておかないと。



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