月夜と狼-12
「食う?」
一枚差し出してみる。
「あたしのチョコなんかいらないっての?」
「違うよ。さんきゅ」
ぺり。と銀紙(金紙?)を引き剥がして口に入れた。
「うま。ほれ、ほしくなっただろ?」
もう一度、一枚差し出すと今度は素直に受け取った。
「おいし」
幸せそうに食うなあ。
俺、コイツにかなり救われたとこあんだな。
逃げないで構っていくヤツもいる。俺とは気付いていよう筈もないが。
「なによ?」
「別に」
俺の視線に気が付いたらしい。
ヤベ、つい直視してた。
「じゃあな。チョコ、サンキュ」
「じゃ、倍返しお願いしようかなあー」
「テメ。調子にのんなよ」
一枚10円?三枚30円の倍返しって60円か?
シッシッ、と手で払いながら玄関のドアを閉めた。
「……。」
チクショウ、やられた。
昨日先手打たれた(告られたも同然?)のが効いてきたらしい。
惚れた?
安易。
最悪。
「はあ……」
……でも、ま。しかたないか。
Fin.