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今、逢いたい
【純愛 恋愛小説】

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今、逢いたい-1

俺は何の光もない暗闇で目覚めた。
自分が何者なのかは判らない。
何処から来たのかも判らない。
何処へ向かっているかは判っている。
俺はおまえの元に向かっているんだ。

思い出す事はおまえの事だけだ。
黒く長い髪。
白く艶やかな頬。
大きくていつも驚いた様な瞳。
小さくてちょっと上を向いた鼻。
「美人じゃないよ」
おまえのその愛くるしい口許はよくそう言っていた。
そんな事はあるものか。
おまえは掛値なしのベッピンだ。
俺はそんなおまえを目指した。

暗い闇を抜けた。
眼前に広がる無数の小さな光。
その光のひとつにおまえがいるのか。
この凍てつく様な冷気の中、無数に広がる小さな光。
その中におまえが…。
俺は凍える身体のまま、おまえの温もりを思いだしていた。
温かくて華奢なおまえ。
そのおまえを何度も何度も抱きしめ。
貪る様に愛し合った日々。
おまえの唇。
おまえの乳房。
俺は思い出していた。

俺の目の前の光の海。
その中のひとつの光が徐々に大きくなってゆく。
俺は吸い寄せられる様にその光に向かって進んだ。
まるで何かに引き寄せられる様に。
時間という物の概念を失っている俺。
どれくらい進んできたのかは判らない。
ただ進む度におまえの記憶がはっきりとしてくる。
おまえと過ごした最後の夜何度も…何度も…。
お互いを求めあった。
普段は控え目とも言えるおまえが。
何度も…何度も…。
俺を求めきた。
普段は俺に貫かれても、声を押し殺している…おまえ。
だが…あの夜は違った。
鈴の音の様な声を切ない喘ぎに代えて。
何度も…何度も…。
歓喜の声を上げていた。
今…俺はおまえの声も思い出した。

そして…。
俺はどうした?
そうだ…。
俺はおまえと離れ…翔び立つ準備に入ったんだ。
何処へ?
宇宙―ソラ―。
そうだ…ソラに翔び立んだ。
俺は自分が何者であったのか少しづつ思い出した。

俺は先駆けではないが。
まだごく限られた中の一人だった。
宇宙飛行士…俺はそう呼ばれていたんだ。
多くの人の声援をうけ。
多くの人の希望を背負い。
多くの人の夢の地。
俺自身にとっても夢の地であるソラに翔び立ったんだ。

そうだ…。
俺は間違いなくソラに上がったんだ。
ソラから見た青い惑星―ホシ―を思い出した。
おまえが居る青いホシを俺の目で…。
しっかりと見つめたんだ。
そうだ…。
この時までは俺の夢。
俺たちの計画は順調に進んでいたんだ。
そうだ俺は…。
待て…その後、俺はどうなった?


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