ほたるのひかり、まどのゆき。-5
(……大学、か)
沈みかけの太陽が紅く染めているグラウンドを眺めながら、俺はぼんやりとそんな事を考えていた。
この前行われた進路調査で、俺は『希望する進路』の欄に成績的に行けそうな適当な大学を書き、適当な理由を付けて出した。
このまま就職して社会に出てやっていけるとは思えないし、一応進学校なので回りは全員進学を目指してるし。
入学した頃は大学なんてまだまだ先の話、と思っていたのだが……気付けば俺の高校生活も折り返し地点を過ぎているわけで。
(俺もあと一年……か)
そんなことを考えていたら、
「ね、もう進路希望調査って終わったでしょ?希望進路どうしたの?」
「……っ」
計ったかのように先輩はそんな事を聞いてきた。
「あー……、一応進学で考えてますよ」
「一応ってなによ一応って」
「ん、なんつーか……漠然としてるっつーか」
「ふーん……。大学どこ書いたの?」
俺はちょっと考えて、先輩相手に見栄を張ってもカッコ悪いだけだと思い、紙に書いた大学を伝える。
ランク的にはまぁ中の上、くらいの私立大学。
「ん、まぁ確かにそこなら今のままでも行けそうだけど」
「今のままでも、って言っても勉強は必要ですけどね」
「分かってる。順当にいけばって事だよ。………………、」
まだ何か言いたそうな先輩。
……ま、なんとなく分かる。先輩が受験するつもりなのは県内の国立大学で、俺の書いたとこは県外だ。
つまり、もし来年俺が無事に合格したとしても。
(遠距離恋愛に……なっちまうのかな)
そういう事だった。
あまり考えたくはない未来。というか、『毎日でも会えるのが当たり前』な現状だから『会いたくても会えない』っていう状況が想像もできない。
「………………」
「ん?どうしたの?」
「……あの、先輩。もし――」
胸の中に生まれた小さな不安を先輩へと漏らしそうになって、
「………ん、あー、いや。なんでもないっす。なんでも」
「えーっ?何よそれ」
「いやいや、やっぱり聞くような事じゃなかったんで。気にせんでください」
「気にしないで、って言われたら余計無理でしょう……。ま、いいけどさぁ」
そう言ってため息を一つ。
「ホント、私がいなかったらあなたがちゃんとやっていけるのか心配よ」
「俺も心配です」
「こーら。何を真面目な顔で頼りない事言ってるのよ」
こつん、とおでこを小突かれた。