ほたるのひかり、まどのゆき。-3
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――そんで、コンサートが終わった後。
「すみません」
俺は吹奏楽部の楽器庫にやって来ていた。中にはあのサックスを吹いていた先輩が一人。
……まぁ、その時を狙って入ったのだから当たり前だが。
「あら、男の子二人で見に来てくれてた子じゃない」
「覚えててくれたんすか?」
「ほら、どうしても見に来るのって女の子がほとんどだから。目立つのよね、男の子がいると」
先輩はカチャカチャと楽器にスワブを通して手入れをしながら話す。
「そうっすね。自分も中学で吹奏楽やってたんでちょっと分かります」
「あ、経験者なんだ?もし入ってくれるんならさ、そこに入部届けがあるから書いてね」
「あの、先輩」
「ん?なに?何か質問でも――」
「先輩に一目惚れしました。もしよかったら俺と付き合って下さい」
告ってしまった。
先輩はキョトンとしている。……当たり前と言えば当たり前だが。
しばらく時間が止まる。
「んー……ごめんなさい」
そして時間が動き出すと同時に断られた。
「っていうか、お互い名前も知らないよね?」
「あ、まぁ……そっすね」
「一目惚れってホントになる人いるんだ……。まぁどっちにしても、どんな人かもよく知らない人と付き合うってのは、ちょっと無理かな」
「……そうっすか」
俺はガクリと肩を落とし、
「……あ、先輩。今更ですけど、先輩って彼氏さんいたりします?」
「え?そういう人は今のところいないけど……」
「なるほど。……それじゃ、」
そこにあった入部届けを手にとった。
「後輩から始めませんかって事で、一つ」
――こうして。
俺のスポーツ系で高校デビューという野望は、恋心の前にあっさり潰えたのだった。