ほたるのひかり、まどのゆき。-2
「あー、吹奏楽部ね。コンサート……って今日じゃん。つーかあと30分で始まるし」
「………………」
「行かねぇの?」
「んー、吹奏楽やるつもりはあんまないんだよなぁ……」
別に嫌いなわけじゃない。
ただ、他の事もやってみたかっただけ。むしろ楽器を吹くのは……音楽をやるのは今でも好きだ。
そして今現在、新しくやりたい事はまだ見つかっていない。
「……行くか」
「お、行く?なら早く行って席取ろうぜー」
「急がなくても席は無くなんないだろ、常識的に考えて」
そんな事をしゃべりながら、ぶらぶらと階段を上がっていった。
――そして、俺は出会ってしまった。
一曲目でソロを吹く為に立ち上がった、テナーサックスを構える一人の女生徒。
つまりは、先輩に。
「――――――っ」
言葉が出なかった。
もはやそれ以降、何の曲を演奏していたかなんて覚えてやしない。
(やべぇ)
まぁなんていうか、
(………惚れた)
そういう事だった。