投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

恋愛小説
【純愛 恋愛小説】

恋愛小説の最初へ 恋愛小説 40 恋愛小説 42 恋愛小説の最後へ

恋愛小説(3)-7



満天の空に星を携え夜がやってきた。でもまだ星を眺めるには早い。星が本当に綺麗に輝く瞬間というものは、本当にあるのだ。時刻は七時、まだその時には早い。日は落ちたとはいえ、空の彼方はまだ燃える様に赤い。
「よーしみんな、片付けが終わったら風呂はいるぞぉ。上がったら女子は晩ご飯の用意、野郎どもはテントをはりやがれ」
木村さんのその一声で一同はわらわらと片付けを始めた。散らばったゴミを片す者、鉄板をたわしでゴシゴシ洗う者。それぞれが自分で仕事を探し、自分で行う。それがキャンプの楽しみというものだ。楽しんだ分は綺麗に片付ける。世界共通のマナーと言ってもいい。けれど大人数が集まれば集まるほど、要領のいい人と悪い人とが必ず現れるわけで、要領がいいとはいえない人達は何をすればいいのか把握できていない様だった。ちなみに、千明はその中の代表的一人だと言えよう。
「ねーねーねーねー?ちーくん、これって燃えるゴミだと思うー?」
「ちーくんちーくん。こっち終わった!次なにすればいい?」
「ぎゃー!ちーくんこれすっごい臭いんやけど!?ちょっとどうすればいいん!」
やかましいったらない。なまじ働き者だから強いことも言えず、僕は聞かれるたびに指示をだすしかなかった。
「あー、それは燃えないゴミ。そっちのは蓋が燃えない方で、中身は燃えるほうにね」
「終わった?じゃあこっち手伝って?終わったら向こうの荷物運び手伝って来て」
「はいはい。鼻つまみながらでいいから、このビニール袋に詰めて。しっかり口を結んだら、向こうのゴミ置き場に捨ててきな」
そんな感じで質疑応答を繰り返しながら、僕も手を止めることはしない。
「ひーちゃんって監督業が似合うよね?」
「まったく、損な役割りだよ」
「みんなひーちゃんの言う事は聞くんだもん、笑っちゃうね」
「年長者がああだからなぁ」
傍らで木村さんは余った缶ビールを次々にあおり、中身を失った空き缶を足で踏みつぶしていた。私欲と仕事をいっぺんにこなす大技だ。
「たしかに木村先輩が指揮してるところって、あんまり見ないよね」
「なんだかなぁ。どんどんこのサークルの秩序ってものが無くなっていってる気がする」
「そんなもの、最初から見当たらなかったけど?」
そう言いながら手を動かす葵ちゃんはもの凄く手際が良かった。千明と比べるのが悪い気がするぐらい、その差は開いている。肩まで伸びている髪の毛を後ろの方で束ねている。さすがにもう水着の上からTシャツを着ていたけれど、少しうつむきがちのうなじはとても綺麗だった。
「はぁまったく」
「まぁまぁそう言わずにね。みんなひーちゃんに期待してるんだよ」
「実力以上のものを期待されてもなぁ」
「ふふっ。と言いつつ今日もみんなを束ねる、ひーちゃんなのでした」

お風呂は意外に広く、しかも男性湯と女性湯が別れているという本格的なものだったから驚きだ。てっきり何回かに分けて入るだろうと予測していたのだが、男性は20人近くもいるにもかかわらず、皆が入ってもまだ余裕のある大きなお風呂になっていた。
「では!我が天文サークル恒例の!!マイサンチェックを行います!!」
「またやるんッスか?そのくだらない恒例」
「くだらないとはなんだ田中!さてはお前、自分が小さいからひがんでるな!?」
「まぁ立派だとは思ってませんけど、木村さんよりはマシだと自負はしてるっス」
「なぁにおぉう!?」男はデカさじゃなくてテクなんだよ!」
「……本末転倒とはこのことっスね」
木村さんが毎年恒例になった(いつも盛り上がっているのは木村さんだけだが)マイサンチェックを行っている。みなまで言わずともわかるだろう。男の子の大事なものチェックだ(僕が何故こんなことを説明しなければならないんだろう)。


恋愛小説の最初へ 恋愛小説 40 恋愛小説 42 恋愛小説の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前