華詞―ハナコトバ―2の花-3
「あーまじ、この話、みんなには絶対内緒だからな?」
照れくさそうに頭をかく隼人の横顔は、子供のようでもあるし、大人のようにも見えた。
私は何も決められていないのに、隼人はいつの間にか前に進んでいたんだ。
胸がぐっと締め付けられるような気持ちになる。
「そっか…。ハヤト、意外と色々考えてるんだ。すごいね。」
「おい、意外とってなんだよ。ミキコって、本当素直に言うよな。」
隼人の笑顔が私だけに向けられる。嬉しいような、切ないような複雑な感情になって胸がやっぱり苦しい。
ぐにっ。
隼人が突然私の両ほっぺたをつねる。
「なっなにするの?」
「え?ミキコ、顔、ひきつってるから。」
「ほんらことらい!(そんなことない!)」
「あはは。おもしれー顔。」
「うるはい!(うるさい!)」
自分でも、うまく話せないのが可笑しくて、つられて笑ってしまう。
隼人が頬から手を話して、右手を私の頭の上においた。
隼人の大きな手が頭をすっぽりと包んでいるようで、少し恥ずかしい。
「ミキコは、笑ってた方が、良いよ。」
「…なにそれ。ほっぺた腫れたら、ハヤトのせいだからね。」
「いいよ。将来のスポーツドクターが、治してやるよ。…なぁ、ミキコ。
…お前も、N大行かない?」
突然真面目な顔になる隼人に心臓が急激に早くなる。
「なっ、何で私が…。」
「だって、進路決まってないんだろ?N大ならたくさん学部もあるしさ。」
「え、でも…。」
「だから、…ミキコと一緒の大学に行きたいんだよ!…あーもう言わせんなよ。」
隼人が口元を抑えて、乱暴に座り直す。
これって、遠回しな告白、なのかな…。
心臓が爆発しそうなくらい早い。
「…私も、ハヤトと一緒のところに、行きたいよ。」
ゆっくり一言ずつ言わないと、心臓が爆発して、何も話せなくなりそうだ。
まともに顔が見れなくて、うつむいていると、髪の毛をくしゃっとされる。
「そんな顔、すんなよな。笑え。」
また頬をつねろうとする隼人の手を、さっとかわしてソファから立つ。
「2度も同じ手には、ひっかからないよー。」
にっと私が笑うと、隼人もソファから立ち上がり、にっと笑い返してくる。