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【純愛 恋愛小説】

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恋愛小説(2)-3



桜井 明菜。それば僕の想いを寄せる人の名前だ。
彼女は大学の一年後輩で、さらに天文サークルの後輩で、さらにさらに言えば高校の頃の後輩でもある。僕が所属していたサッカー部のマネージャーとして、彼女は活動をしていた。そのころから好きだったのか、と木村さんは前に僕に言った事がある。いえ、そうじゃないですよ、と僕はそう答えた。
「なら大学からか?さしずめ気になっていた後輩が大学に来て思ったより綺麗になっていた。サークルも重なった事をいいことに、お前は狼のように桜井に言い寄ったわけだ」
木村さんには何かを決めつけて話す癖があった。この時はその癖が悪い方向にでてしまった訳だ。
「まぁ遠からずって所です」
「そのことを井上は知っているのか?」
そう言ったのは田中で、答えたのは僕ではなく木村さんだった。
「知っているはずないだろう!知っていたら、あんなに水谷の近くにはいられないだろう!?」
「いえ、知ってます。というより、一番最初に気づいたのは千明でした」
僕の中でくすぶっている記憶。それは懐かしいと表現するには近すぎて、けれど夜に急に蘇ったりする事はなくなった距離にぽつんとある。今ではもうずいぶんと思い出すことはなくなった。もちろん、毎日の様に千明と会っているのだから、嫌が応にも思い出してしまってたのは過去のこと、ということだ。




「ちーくん」
「ん?」
「ちーくん、好きなひとおるやろ?」
食堂でランチを食べている時に、なんの脈絡もなく千明はそう言った。脈絡なんてものが千明にはなんの意味も持たない、といった口調だった。
「なんで?」
僕はこのとき動揺していた。千明の気持ちを知っているのももちろん理由にあげられるし、僕は僕自身で、彼女の想いに確信を持っていなかった時期でもあったからだ。お茶を飲もうとしてとぼけたつもりだったのだが、僕のそれは見事に失敗し、器官に入ってむせ返ってしまった。
「むぅ。んで、でもって、それは私じゃない」
「だから、なんでそう思うのさ」
「……なんとなく」
「なんとなくで恋が確立するなら、世界はもっと平和になるだろうね」
僕はなんとか平常心を取り戻さなければならなかった。お茶を再度飲もうと試みる。
「隠しても無駄やで。私、ちーくんのことやったらなんでもわかるんやから」
「じゃあ僕が今朝食べた朝食のメニューはなにさ?」
「はぐらかさんといてよ。別にしてへんなら、してへんほうがいいに決まってるんやから」
千明の眼が泣きそうだったから、僕は再度お茶を器官に流しこむところだった。コップから口を離し、出来るだけ丁寧に机に置く。それだけのことをする為に、僕は細心の注意を払わなければならなかったのは言うまでもない。
「とにかく、どうなん?好きなひと、いるん?いいひんの?」
僕はゆっくりと眼を閉じ、静かに自身の精神と対話する。僕は、彼女が好きなのか。そうじゃないのか。そうじゃないのなら、どうおもっているのか。どうも思っていないなら、なぜ僕は今あせったりしているのか。

答えは明白だった。答えはどんなときも明白だった。



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