恋愛小説(1)-3
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僕のことを少し紹介しておこうとおもう。この物語の主人公でもなんでもない僕のことは、ぶっちゃけていうとどうでもいい話なのだけれど、一応の礼儀として話さない訳にはいかないだろうから。ちなみに主人公は千明だ(これも想像に容易いことだと思う)。
「ねぇ千明、今からとりあえずお腹が減ったから食堂に向かっているこの時間を、寒い寒いと言って終えるのは勿体ないと思わないかい?」
「ん?うん」
「だから、とりあえず僕の紹介して」
「ん?うん。するしお昼おごりにして」
「ん、まぁいいよ」
「よっしゃー。うん、じゃあちーくんの紹介する。ちーくんは、絵がうまくって、本をたくさん読んでて、頭でっかちで、なんやしらん人類滅べばいいとか言う破壊思想の持ち主で、でも優しくって、でも平凡な男の子」
うん。たぶんどこも間違っていないと思う。実に的確で、実に明快な紹介だ。
「で改めて聞くけど、その僕のどの部分を好きになったの?」
「えぇ?またその話し?だから言ってるやん。平凡な男の子ってところ」
「で『男の子』って所が重要なんだね?」
「うん。女の子じゃアカン」
つまり、僕は男の子だからほれられたってこと。