恋愛小説(1)-12
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そんな風に仲介役が優秀だと、出来事とは察して大きなことだったのではないか、と思わせるから千明は凄い。実際にこの後のサークルの時間を、僕は大多数千明と過ごした。それが功を制したのか、学園祭は結構な盛況をもたらしたのだった。
「ひー、疲れた。みずっち、肩もんで」
「それはいいけど、僕も僕で疲れているんだけど?」
「ん。わかった。ここは一つ歩みよって、缶コーヒーをゴチになることで手を打とう」
「さっきより要求は大きくなってるけどね」
そう言いながらも僕は千明に缶コーヒーをおごり、肩を揉んでいたのだからどうしようもない。しかし実際に彼女がいなければ成功は無かったのだから、それも致し方ない所ではあるのだろうけど。
「あ、あったかいやつな?」
「はいはい、お気のすすままに、女王陛下」
「わっはは、よきにはからえー」
その後、水増しをしたメンバーが正式に詫びてきた。あとで聞いたところによると、千明がなにかと説得したらしい。
「水谷、わるかった」
「もういいよ、すんだことだし。確かに僕の態度も悪かったんだから、それでおあいこにしよう」
「そういってもらえると助かる」
その会話の向こうでは、千明が満面の笑みで僕に手を振っていた。
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学園祭が終わってからの大学は退屈だ。学園祭自体が面白かった訳ではないが、終わってから振り返るとやはり充実した日々だったからだろうと思う。それ以来、僕の隣にはいつも千明がいた。講義を聞くときも、サークル活動をしているときも、昼ご飯を食べているときも。
不思議に思わなかった訳ではない。でも僕はそれを意識して不思議に思わないでおこうと務めた。千明が僕にとなりにいるのは友人としてであって、それ以上でも、それ以下でもないという事を。でも思わないでおこうと考えれば考えるほど、僕は頭は短絡的な方向に向かうのであった。まったく、人の感情ってのは良く出来ている。いいか悪いかは別として。