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華詞―ハナコトバ―
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華詞―ハナコトバ―1の花-2

「へぇ。変わってるね。ミドリかエンだと思ったよ。」

「良く言われる。あだ名もエンだから。」

プレートに書かれた綺麗な藤沢縁を見ていると教授が入ってきた。
今日の講義は恋愛感情論。
男女の恋愛感情や同性間の恋愛感情。友達への感情と家族や恋人への愛情との違いなどを論理的に説いていくといったものだった。
男女一組になってお互いの苗字と名前を呼び合ってみるという実験をした。
私は藤沢ヨスガとペアになり、何回かお互いの名前を呼び合った。

「さち」

そう呼ばれるのは慣れていたし、クラスも違うのでその場しのぎで良いと思い、
本当は呼び方が違う事は言わずに、さちのまま否定もせず呼び合う実験をしていた。
当然自分の名前じゃないから、何とも思わない。
実験の後、苗字と名前で意識の仕方はどの程度変わるかという感想を論議する時間があり、大半の生徒が名前で呼ばれた時、呼んだ時は緊張した、意識したという解答を出した。
何だかくだらない実験のような感じがするが、それを真剣に、たまにメディア慣れしたジョークを飛ばしながらの講義は面白く、あっという間に90分が過ぎた。
チャイムがなり、みんなそれぞれ次の講義の準備をする。
まだ大学に入って、どの授業を取るのか選択期間なので次にどの講義に出るかは自分で決められる。
どの授業に出ようかと履修表を見ていると藤沢ヨスガがじっとこっちを見ているのに気が付いた。

「あのさ、本当に名前、さちなの?」

おもむろに藤沢ヨスガが訪ねてくる。

「なんで?」

「えっと、別に…何となく。」

何だか腑に落ちないといった表情で藤沢はメガネを上げる。

「…ゆきだよ。」

「え?」

「本当は白石ゆき。」

「はぁーーーーー。」

突然藤沢ヨスガが深いため息をついた。

「何?それがどうしたの?」

「なんだよ。俺、ずっとサチって呼んでたじゃん。講義中。」

「うん…だって訂正すんの面倒くさかったから。」

「はぁーーーー…。先、言ってよ。すげー恥ずかしい。」

そう言うと藤沢の頬が少し赤く染まる。

「え?なんで恥ずかしいの?意味わからない。」

「だって俺だけ緊張してるなんてずるくね?」

「緊張してたの?」

「当たり前じゃん!あーーー思い出すとすげー恥ずかしい。」

藤沢の頬が更に赤くなる。

「…ゆき。」

ドキッ

突然名前を呼ばれて少しビックリする。


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