第二話〔続〕――密偵と王女と女装少年-7
「……で、できましたのっ?」
「へぇへぇ、できやしたよっと……」
洗面台から寝室へと顔を出すとエレナが待ちきれなかったのか、目の前に立っていた。
だが、ポカン、と口を半開きにさせて呆然としている。
――そんなに変な顔だろうか?
「んで――いかがでしょうかね、感想は?」
「あ、の……はい、それは……もう…………」
「……?」
ケネスの脳裏に疑問符が浮かんだ。
先ほどまでの押せ押せの態度から一変、エレナはそれこそ淑女のように畏まっているのだ。
モジモジと親指同士を絡ませ、俯いている。
「……あの、変すか?」
「いっ――いえ、そんな!それはもう格好良く、私の想像の三倍は――。ぁ…………はぅ。すみません」
キッと顔を上げると全力でエレナは否定したが、途中で自分の言動の不備に気付いたのか、その上気した頬を両手の平で抑えた。
ケネスは再度、室内の姿見で己の姿を観察してみたが、どこもおかしい所はない――はずなのだが……。
「んま、かっこいいんなら別に良いですがね」
「ああ、そんなあっさりと……」
「は?」
「い、いえ……。あっ!な、なにかお飲みになられますか?なられますよね?あら、なにが良いでしょうか……」
エレナは罠にかかった野鳥のようにクルクルと身体を回し、室内を検分しだした。
落ち着きがなく、しかし、どこか嬉しそうだ。