第二話〔続〕――密偵と王女と女装少年-4
「では、なんと?」
「――気高く、人を見る目がある」
「あらあら……。ふふふっ」
エレナは目を丸々と見開いたが、すぐに口元へと手をあてがい、クスクスと笑った。
ケネスも喉の奥で笑い声を転がす。
――しかし、なぜ、この王女様は毎度毎度、俺の正体を間髪入れず見切れてしまうんだろう?付き合いの長いパスクですら僅かばかりの間を要するというのに……。
ケネスは(若干のプライドの問題もあり)良い機会だと、その内なる疑問をエレナへと問うてみた。
すると、パープルブロンドの少女はその柔らかそうな頬を綻ばせ、コロコロと笑う。
「ふふふっ……だって、ケネスさんはケネスさんでしょう?」
「いや、お言葉ですがね、王女。こう見えても大陸でも最高レベルの変装術を持っていると俺は自負しているわけで、そこに魔法による偽装もしているんだから、もうすでに別人だと思うもんなんですよ――普通は……」
「そうなのですか……。それはご迷惑を――」
「別に迷惑ってわけじゃあ、ね。まぁ、コレはコレで使いようがあるし……」
ケネスは台詞の後半を口にする際、ナイフを思わせる冷たい笑みを浮かべた。
しかし、エレナは表情一つ変えず、のほほんと首を傾げる。
「でも、そうですね。ケネスさんの本当のお顔を拝見してみたいです、私」
「いぎっ……それは、ねぇ?」
あくまでもマイペースを貫くエレナにケネスは鼻白んだ。
だが、ケネスの動揺の訳をエレナは察せれなったようで、先ほどとは反対向きに首を傾けた。