第二話〔続〕――密偵と王女と女装少年-28
「はぁ……はぁ……。襲われるかと思いました」
「誰が男を襲うか!」
「いや、でも……ケネスさん、無事で良かったです。盗賊ギルドの隠れ家が火事になったと聞いて……」
「いや、それがよ……っていうか、パスク!?いま、なんて……」
「はい?ですから、盗賊ギルドの隠れ家が――」
「なんで、パスクが知っているんだっ!?」
ケネスの絶叫が路地に木霊した。向かいのアパートメントだろう建物から迷惑そうに老人がにらんでくる。
声量を落とすとケネスは続ける。
「なんで、パスクが盗賊ギルドの隠れ家を――っていうか、俺たちが盗賊だって知っていたのか?」
「え?はい、それはもう。結構、前におやって思いまして、ゴーブルさんに『盗賊ですよね?』て聞いたところ、教えてくれました」
「あんの、エロジジイ……。死んでまでもかぁ……」
「死?」
「ん、ああ。実は盗賊ギルドが襲われた。身内にな――」
首を傾げるパスクにケネスは今日一日に起きたこと、そして現状を教えた。
街の外の人間であるパスクは良い意味でも悪い意味でも、この街に執着はない。信用ができた。
「それは……たいへんでしたねぇ」
パスクが他人事のように――いや、他人事なのだが――に漏らした。
そして、ケネスの顔をよくよく観察した女装少年は紙袋から林檎を取り出すと差し出してくる。