第二話〔続〕――密偵と王女と女装少年-26
「……っ!官憲のご登場……。メンバーは捕縛の後、断首。検分の名目で、アジト内のモノは全部、国に召し上げられる……」
「だろうねぇ。ウチのマスターも強情っぱりだったから、敵も多いさね――どっかで怨まれていたのだろうさ。ホレ、さっさとお逃げ。とっ捕まるよ?」
「……。ばあ様はどうするんだ?」
「さぁ〜て……皇帝陛下殿にただでくれてやるってのも、癪だわね」
「――まさかっ」
「もう、お行き!上手くやってやるからさ」
スキュラがキッとにらんできた。昔、悪戯したときに叱ってきた時と同じ表情だった。
ケネスは続きを告げたくなる衝動に駆られたが、なんとか堪え、小さく頭を下げる。
するとスキュラは頭をそっと撫でてきた。
「いつのまにか、あのクソガキがこんなに大きくなって……」
「ばあ様……世話になった。ありがとう」
ケネスの頬を暖かいものが滴った。
スキュラも同じく、その肌を濡らしていたが、互いに気付かないフリをする。
「行ってらっしゃい、ダリクルス……」
「……。……はい」
ケネスはそのまま、スキュラとは視線を合わさずに娼館を出た。コレが今生の別れになることは分かりきっていたが、それでも、合わせなかった。