第二話〔続〕――密偵と王女と女装少年-19
「パスク!このっ、天才!最っ高だな、こんちくしょう!」
「えっ……と、」
「おいおい、パスク。いま、自分がしたことがどれだけ凄いか気付いてないのか!この大陸中の金持ちや貴族共が揃って大金を払っても習得できなかった奴らもいる、そんな奇跡をお前は使ったんだ!しかも、誰にも教わらず!」
「そんな、凄いことなのでしょうか?」
「凄い、凄い。第一、パスクのような身の上だと文字だって読めるほうが少ないぞ?」
「ああ、それは昔……子供の頃に大体は教わったので、あとは自然と――」
「くくっ!それが天才だってんだよぉっ!いいか、パスク。今度、その導師がソレを取りに来るまでにいまのを完璧にできるようにしておけ。そうすれば、お前は晴れて魔導師だ」
「魔導師?」
「俺が導師だったら、一にも二にも――自腹を切ってでも、パスクを魔導師にする」
「はぁ……」
今一、分かっていないような表情でパスクは頷いたが、ケネスはさらに笑った。
そこで、ふと気が付いた。自分は、この少年に自分を重ねているのだと。
――最低限の幸福すらも自力で手に入れるしかない、雑草以下の根無し草。
それが自分は盗賊、彼は魔導師――それなりに大成するなんて、なんて楽しいことだろう!
パスクの肩を抱えて、ケネスは大きく笑った。