僕が君にできること-1
両親はもうこの世にいない。
妹も、もういない。親しかった友達も・・・奪われた。
ひとりぼっちになって7年になるが、そういう奴はこの世界じゃ珍しくない。
寧ろ生きていられるだけで恵まれているのだろう。
だと言いたいが、非力な人間達にとってはお世辞にもそうだと言える環境じゃなかった。
両親はまだ自分達が子供の頃は平和だったと言ってたが、俺が生まれた時は既に、地上は地獄と化していたのだ。
どこからやってきたのかも分からない、見るからにおぞましい姿をした¨悪魔¨。
人間に近い外見の奴もいれば、頭が犬だったり、手がカマキリみたいな奴もいる。
背中に鳥の羽根を生やしたのもいたし、下半身が蛇みたいな奴もいた。
そいつらが前触れも無く現れて人間を襲い始め、平和だった日常は容易く崩れ去った。
ジエータイ、だかグンタイ、なんて戦う力を持った奴らがいたらしいが・・・全く歯が立たなかったのだ。
悪魔の蹂躙を止める事は出来ず、僅か十数年で地上の人口は激減しちまったそうだ。
戦う力を持たない人間達は地上に出られず、地下に潜って生き延びるしかなかった。
両親が言うには動物や昆虫っていうのと人間が合わさった様な姿らしいが、俺はそれらを図鑑でしか見たことが無い。
犬だとか猫、あとは蚊や蝿、鼠ってのとゴキブリくらいなら見たことがあるけど・・・
そんな恐ろしい奴らと暮らしてたっていうんだから、昔の世界は果たしてどんな所だったんだろうな。
こんな・・・
骨が至るところに落ちてなくて、土が変な色じゃなくて
嗅ぐのも嫌な臭いが辺りに充満してなくて、空ももっと綺麗な色なのかな。
映像でしか見たことないけど、人が集まって暮らしてた¨街¨があちこちにあったんだろう。
「・・・そろそろ悪魔が出てくるな、戻るか」
間もなく日が暮れる。
悪魔は、俺が住んでいる辺りにはこの時間じゃ来た事が無い。
他の地域でも昼間は見かけないとは聞いてるが、それも日没前の話だ。太陽の光が届かなくなると・・・
地上は狩場になる。
丸腰で出れば、即、食糧だ。最もまともな武器すらなく、せいぜい鉄パイプくらいで、悪魔からすれば素手と変わらないだろう。
それに、昼間だろうがお構い無しにうろついてるのもいるから油断は出来ない。
もうこの地上に俺達が安らげる場所は無いんだ−
それでも、別に構わない。
俺には無理してまで生きる理由も目的も無いから、いつ死んだっていい。
ただ悪魔に食われるのなんか嫌なだけで、死んでしまうのは構わないんだ。
こんな考え方だから普段も誰とも口をきかず、近寄ろうともしない。
わざわざ危険な地上に出てきてるのも、顔を合わせたくないからだ。