僕が君にできること-5
・・・サラが聞いたらなんて思うだろう。
俺はこういう人間なんだよ、だからもう構っちゃいけない。触れたらいけないんだ。
『おや、何でしょうね。そんな顔をするとは』
「あん?なんだよ、笑ってたらまずいのか」
『いいえ。これから食糧にされるというのに、珍しいなと思いましてね・・・』
悪魔はさっき見せた腕を俺に向けた。
どんな方法で俺を肉の塊にするのかは知らないが、あのトゲだらけの腕を使うのだろうか。
だが、俺はそれに目もくれず、殺された家族と親友の顔を思い浮べていた。
待たせたな、みんな。やっと俺もいけるよ。
恐怖が全く無い、とは言わないが、死が迫っているわりにはあまり怖くない。
満足だからかな。
どんな形であれサラを守ることが出来たから・・・
俺は、今の自分に出来る精一杯の事をしただけだ。
こんなになる前の世界だって、きっといつ死んでもおかしくはなかったに違いない。
今更生まれた事を嘆いたってどうしようも無いんだ。
だから・・・誰かを守って死ねる俺は、きっと幸せだ。
『私からの手向けです。亡き後もその表情のままでいられる様にしてあげますよ・・・』
悪くない、だけどこいつを見たまま死にたくはない。
見上げる空は
今迄見てきた中で、一番綺麗だった−
〜〜終〜〜