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とある街のとあるモノガタリ
【純愛 恋愛小説】

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亀裂-1

「今日は朝から手伝いに来てくれるって言ってたのにおかしいわねー。お寝坊かしら」



 休日は明希が店を手伝いに来るはずなのに、開店時間をとっくに過ぎたこの時間にもまだ顔を出さないのだ。湯来は心配そうに何度も窓の外に視線を向けていた。そんな様子にカイキは少し昨日のことを思い出し、言い過ぎたのかと思慮するが、答えなど出るわけもなく悶々とする。



 そんな時――



 カランと来客のベルが鳴る。



「いらっしゃいませ」



 店に入ってきたのは白髪混じりの初老の男性。カウンター近くでテーブルを拭いていたカイキがその姿を見るとピタッと動きを止めた。そして、席に座ることなく、カイキへとその男性は静かに口を開いた。



「久し振りだな。灰稀(カイキ)」

「…………父、さん」



 カイキはこの世で最も会いたくない人と再会した。





****





 気を利かせた湯来に父親と部屋へと戻るように言われ、仕事を中断して部屋へと招き入れた。



「狭いし、汚いな」



 部屋に入るなり、辺りを見回すと怪訝そうに顔をしかめた。



「一人なら何も問題ない。…………それより何しに来たんだ」

「そろそろ帰ってこい。灰稀」



 予想通りの答えにカイキは首を横に振る。無論、それは父親にも解っていたことで、小さく溜め息を吐いた。



「だろうな。そう言うと思っていた。では、これを見たら気が変わるか?」



 そう言いながら、父親は胸ポケットから一枚の写真を取り出し、カイキへと差し出す。




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