亀裂-7
「坊っちゃん」
「…………、離せ」
黒服の男を鋭く睨み上げる。出ていく前と違い、男はその眼力に息を飲んだ。
「慣れん薬で気を失ったか。起こせ」
初老の男性の言葉に従い、もう一人の黒服が明希の襟首を掴むともう片方の手を振り上げる。
「止めろ! これ以上っ」
カイキが叫んで制止する。でも、誰も聞いてくれることはなく、敢えなく降り下ろされる。
が、乾いた音は聞こえ無かった。部屋の扉が乱暴に開かれた音に気を取られたのだ。
「アキから手を離せ」