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とある街のとあるモノガタリ
【純愛 恋愛小説】

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亀裂-6

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「戻っただろ! アイツを家に帰せ!」



 隣街にある『今藤製薬株式会社』の巨大ビルの最上階。社長室と書かれたプレートの貼られた部屋の中。カイキは執務机に座した先程の初老の男性に訴える。が、男は取り合う様子は一切見せないでいた。

「まだ帰せん。必要な事は何一つ聞き出せていない」



 仕事関係か何かの書類を見ながら、男は冷静な口調でそう言う。カイキは納得出来ず、首を横に振る。



「意味がわかんねえよ! アイツは関係ないだろうが!」

「そうだ。お前には関係ない。あの小娘がお前の知り合いだったのは偶然だ」

「……どういうことだよ……」



 偶然? 偶然、この男が捕まえたヤツがアイツだった……なら、何で捕まえたんだ……。まさか、父親の『裏の仕事』に関わってるのか……?



 困惑と懸念。それらが入り交じってカイキは声が出ない。



「…………せめて会わせてやる。これからのために知っておけ」



 男はそう言って何処かに電話を掛け、『連れて来い』とだけ告げ受話器を置いた。ほんの十分ほどすると、誰かが社長室の扉をノックした。



「入れ」



 それを合図に扉が開き、黒服の男二人が入室した。その中に両脇を支えられ、引き摺られる明希の姿。



「明希っ!」



 聞こえているのかどうかも解らない。目には黒い布を巻かれ、着ている服は引き裂かれたのか前を開かれたまま。明希を抱えた男たちは部屋の主の前に彼女を転がした。



 明希に駆け寄ろうと、カイキが動くと彼女を連れてきた黒服の一人がそれを制止する。




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