触れるココロ-3
「わざわざありがとね。カイキくん」
カイキはそれに動きを止めた。明希は存外に可愛い部類に入るのだろうと初めて気付いた。着飾らないし、化粧気もないから地味に見えるが土台は良いのだ。
「? どうしたの?」
明希に不思議そうに問われ漸くカイキは我に返る。
「カイキくん、お店終わり?」
「…………一応」
湯来にあがって良いと言われ、ここに来たのだ。明希は本を鞄に直すと、カイキに再び笑い掛ける。
「ちょっと散歩しにいかない?」
「…………」
また突拍子もない。どうもそう言うタイプなのだろう。ここ数日、見ていて解った。性格は明朗活発で、人当たりも良い。人と接するのが苦手なカイキとは全く正反対なのだ。
そんなカイキに明希は引くことなく、それどころかゆっくりと近付いてくるのだ。
「ね? 行こ」
沈黙は肯定と捉えた明希はカイキの手を握ると街の外れにある河川敷へと歩き出す。