果たせなかった約束-3
…グチュグチュグチュ
「ダメだっ!イクっ!!」
「来てっ!来てぇっっ!!」
膨張し、堅さを増す肉剣。それを隙間なく包み込む様に収縮する肉壁。限界。一気に先端が躍動した。
「うおぉぉぉっ!」
「あぁぁぁんっ!!!!」
…ブルッ!ビュルッ!ドププッ!!
彼女の胎内で弾け飛ぶ白濁液。今までにない程、大量に放出し、奥に注ぎ込まれる。
「はぁっ、はぁっ…」
「あっ…あくっ…」
汗まみれになった二人の顔。お互い、見つめ合いながら微笑む。
「良かったぜ…」
そう言いながら、彼女のおでこに口付けする。
「私も…」
恥ずかしそうに答えた彼女。
そのまま抱き合い、何度も唇を交じ合わせる。そして、雨音を聞きながら眠りについた…
−次の日の朝。昨日の大雨が、嘘の様に晴れ渡っていた。
任務に戻る為に身仕度をする俺。昨日の事が夢の様に思えた。しかし、俺の足に巻かれた包帯が、現実だと認識させてくれた…
−『忘れないで欲しい』
その想いから、俺の銀のブレスレットを彼女に渡した。
笑顔で受け取り、それを腕に付ける。そして、大きなバッグとAUGを担いで俺にこう言った。
「必ずまた、どこかで逢おうねっ!」
「平和な世界でな。約束だ。」
静かに答える俺。
見つめ合う二人。そして、彼女が呟いた。
「ありがとう…これで人間らしくいられるかも…」
その言葉を残し、建物を後にする彼女。そして、再び戦火の交える地に赴く…
−その一報が入ったのはあれから約三ヵ月後の事だった。同盟軍第二特殊部隊壊滅作戦の成功。
皆が喜ぶ中、敵軍の遺体が搬送される。約80体の遺体を前に、目を疑う光景があった。
見慣れた銀のブレスレット。
彼女の変わり果てた姿。愕然とする俺の後ろから、仲間の声が聞こえた。
「この女傭兵、ガキを守って射たれたんだよ。」
仲間が、ゆっくりとした口調で俺に語りだした…
−激しい銃撃戦が繰り広げられていたG-24地区。場所柄、民家が多く点在している場所で、一般人の巻き添えも多かった。
同盟軍の部隊が放つ弾幕に防戦一方だった連合。しかし、そこで異変が起きた。
連合の流れ弾が離れた民家を襲う。中から聞こえる子供の悲鳴。
その直後、彼女がその中に突入した。そして、怪我をした子供を抱き抱え、脱出を図った。
だが、待ち受けていたのは連合の容赦ない一斉射撃。全身に弾丸を浴び、蜂の巣になる彼女。しかし、子供の盾となり自らの体で全てを受けとめていた…
−息絶えながらも子供を包み込み、守り通した彼女の亡骸を丁重に葬る連合軍。敵でありながら、勇気ある行動が皆の心に響いた。
軍葬が終わり、ある種の虚脱感が俺を襲う。
《何故…》
そう考えている時、仲間から声をかけられた。
「おい。これ、お前のだろ?」
渡された物。それは彼女の手首に巻かれていた銀のブレスレットだった。
「お前、あの女と顔を合わしてたんだな。こんなの知られたら、軍法会議モノだな。まぁ、今回は黙っとくけどよ。しかし、死体から持ってくるのは忍びなかったぜ。」
そう言って、俺の肩を叩き立ち去っていく仲間。
握り締められた血染めのブレスレット。その時、彼女の言葉が思い出された。
『人間らしく』
彼女の行動は、正にそれだった。
激しい戦火の中、まともな精神状態など維持出来ない事も多々ある。中には、常軌を逸した行動を楽しむ輩もいる。
だから彼女は、『人間』としての尊厳を保とうとしていた。そして、死ぬ間際まで『人間』を貫き通した。
虚しさが心の中を支配する。俺はブレスレットを見つめながら、果たせなかった約束を思い出して涙した…