真知子・ふたたび-5
月日が経ち、やがてその日がやって来た。
真利の18歳の誕生日…それは、母親である真知子の誕生日でもあり、その命日でもある。
真知子の墓参りを終え、夕飯を食べながら父娘二人でささやかな誕生祝いをした。
「真利、誕生日おめでとう。立派に育ってくれてお父さんは嬉しい。…後で少し話があるので、部屋で待っていなさい」
…そう告げた。
真利は頷いた。そして、意味ありげな表情で私をじっと見詰めた。
話をする前に、自分の部屋で少しウィスキーを飲んだ。気持ちを落ち着けるためである。
「真利、入るぞ」
娘の部屋に行き、ふすまを開ける。
…娘は、布団の上に座っていた。
その姿を見た瞬間、頭がクラッとした。真利じゃない…そこには妹の真知子がいたのだ。
あの日と同じだ。そして、あの時と同じ色のパジャマを着ている。
だが、そんなはずはない。娘の真利のはずだ。普段は後ろでポニーテール風にまとめている髪を下ろしているから、真知子と見間違えただけだ…。
「…違うわ、お兄ちゃん。私、真知子よ」
(何?…な、何を言い出すんだ、真利は)
「か…からかんじゃない、真利。お父さんをからかって、何が面白いんだ?」
「うぅん、違うの。からかってなんかいないわ。私、本当に真知子なの。…お兄ちゃんの妹よ」
「真利、冗談はよそう。…それより、大事な話があるから聞きなさい」
「話は分かっているわ。義理の父親じゃなくて、真利の本当の父親なんでしょ。私、真知子だからよく知っているわ。私に真利を授けてくれたのはお兄ちゃんだから」
何を言っているのか分からない。…頭が混乱している。
「ごめんなさい。信じられないと思う。…でも、私、本当に真知子なの。子どもの頃は確かに真利だったけど…。中学生になってから…ある日、自分が真知子であることに気付いたの。真利だという意識が半分くらい残っている時期もあったけど、もう今はほとんど真知子なの。真利はもう私の中に隠れてしまったみたい…」
娘の話を聞きながらそばまで寄った。…座って落ち着いて見れば、間違いなく真利である。顔や雰囲気は似ているが、真知子に比べると、ずっと健康であった分、身体の発育が良かった。胸の膨らみも一回りは大きい。