聖夜(その2)-1
霧のかかった漆黒の闇に包まれたどろりとした沼で、藻のような棘の蔦が絡んだ麗子の白い裸体
が陽炎のように浮かび上がる。
その裸体を貪るようにねっとりと絡みつく奇怪な獣…その獣は鋭い爪の生えた毛むくじゃらの両
手と両脚をもち、鱗に覆われた太い胴体は蛇のように尾が長く、背中には蝙蝠のような巨大な羽
根を背負っていた。
顔は… なぜか顔が見えない…。
妻の裸体にねっとりと絡む獣は、麗子の陰唇を引き裂くように異様な形をした太い性器を挿入し
ようとしている。獣は、激しく体を揺すりながら、咆哮めいた啼き声をあげ、麗子の白い下半身
を爪のある両手で抱え込む。
K…氏は目の前に繰り広げられる情景に、性器の奥から湧き上がる淫猥な疼きを感じていた。
妻の潤みきった肉襞が収縮し、やがて獣の奇怪な肉根をひしひしと喰い緊める。白い下腹部を
波打たせながらも、麗子は恍惚感に深く浸っているようだった。
…あっ…あっ…
沼の中で浮き沈みする妻と獣が絡みながら身悶えをしている。その水の音が木霊のように霧の中
に響く。
妻は翳りのある滑らかな背中をくねらせ、顔をのけ反り、喘ぎ続けている。淡い灯りに照らされ
た蒼白い乳房には、ひしひしと蔦の棘が突き刺さり、尖った乳首が苦しげに息づいている。
獰猛な獣の堅い肉根の先端が、生きた爬虫類のように雁首をもたげ、妻の肉襞を内側から掻き毟
っているのだ。そのぬめった先端を烈しく欲しているように、妻はおびただしい蜜液を滴らせ、
淫襞を妖しく蠢かせていた。
そして獣が挿入したものは、荒々しく突き刺すように妻の膣の粘膜を擦りあげていた。獣の太い
肉塊はぬるりぬるりと徐々に妻の陰部の奥深く、その空洞を充たしながら突き上げ、子宮の奥ま
で犯すほどに深く忍び込んでいるかのようだった。
…もっと…もっと、深く欲しいわ…
妻の白い咽喉の奥から、痺楽の快感とも言える嗚咽が迸る。
やがて妻の肉襞の粘膜が熱く吸着度を増し、獣のものをしっかり受け入れ、その肉襞は小刻みに
痙攣し、急速に収縮しはじめるのだった。
その獣のものは妻の子宮を突き破り、臓腑を溶かすほどの熱気を帯びているに違いない。妻は
自らの性器の中に、毒歯で喰い裂かれるような深い肉の悦びに浸っているのだ。
どくどくと獣の射精が始まる…振り向いた金色の毛で覆われた顔…それは欲情に充ちた、ぎら
ついた瞳をした別人のようなあの青年の顔だったのだ…。
咽喉元を締められるような息苦しさに、K…氏は夢から覚めた。
マンションの部屋の窓の外は、まだ深夜の暗闇に包まれている。汗が体中に滲みでて、下半身の
下着の中には、生あたたかい白濁液がべっとりと付着していた。烈しい眩暈と吐き気がK…氏を
襲ってきた。