愛から生まれる悲劇-1
◇愛から生まれる悲劇
Side/M
夏休みが終わり、学校では学園祭のための準備で大忙しだ。
それ以外はいつもと変わらない学校生活だが一つだけ気にかかることが出来た。
信人の様子がおかしい。
研修旅行から帰ってきてからというものどこかよそよそしく、まともに目線を合わせてくれないのだ。
僕何かしたかな・・・
「桐生君。メイド服のサイズ見てもらいたいんだけど」
僕のクラスはメイド喫茶をやることになり、大半は女子がメイドになるのだが、いわゆる色物扱いで男子も数名メイドを選ばされて僕は当然のように推薦された。
衣装室となっている家庭科室へ行くと、マネキンにRPGゲームに出てきそうなメルヘンチックなメイド服が着せてあった。
「あ。これ僕がデザインしたやつ・・・」
衣装を作るにあたって、ありきたりなものではつまらないということで生徒達からアイデアを募り、僕は今持っている服を部屋に並べてデザインしたくらい力を入れたものだったのでとても嬉しかった。
「そう。一番可愛かったからね」
作るときにもなるべく簡単になるようにデザインしたので、シンプルだけど可愛らしいものに仕上がっていて、やはり実際に服になると感慨もひとしおだ。
「桐生君こういう服のデザイナーでもやったら?」
「そ、そうかなぁ」
「じゃ私外で待ってるから着替えたら呼んでね」
女子生徒が教室から出ると僕はマネキンから外されたメイド服に袖を通した。
なんだか蒼介に会いに行くときのような気分になってしまって、思わずパンツを脱ぎそうになって笑ってしまった。
ああ
ガーターベルトとニーソックスが欲しくなる・・・
だめだ
いやらしい気分になっちゃう
僕は抑えきれない感情をぐっと押し殺し、外で待つ女子生徒を呼んだ。
「・・・・ちょ、ちょっとこっちきて・・・」
僕を見た女子生徒は驚いた顔をして僕を椅子に座らせて、がさがさと自分の鞄を漁っている。
「目、つぶって」
ぱたぱたとスポンジが肌を叩いて、ブラシで眉毛を書かれ、目にはペンでラインを引かれていく。
メイクが始まった。
やっぱり女の子は上手だな
そんな事を考えていると、いつの間にか完成しており鏡を手渡された。
綺麗にメイクを施された自分の顔を見て、やはり蒼介に会いに行く時の妖しい感情が沸々を蘇ってきてしまう。