ワルグチ-5
「ずっと見てたの、陸先生の事。好きで好きで、もうたまんなくて」
気取りの無い言葉だったが、今の俺の心にストレートに響いた。
自分が、彼女の顔色を伺い機嫌ばかり取っていた事に、ようやく気付かされたのだった。
「こ、こうすればっ、先生がまた笑顔になるかなって、思って・・・」
感極まり声が震える海東。
あくまで俺の勝手な推測だが、さっきの日比野への悪口を聞いて、本人が言った通り俺の為に告白しようと決めたのかもしれない。
思えば、あの会話をしていたのはついさっきだ。
思い立ったらすぐ行動に出るのはいかにも海東らしく、その真っ直ぐさがとても眩しかった。
「だから、陸先生、私と・・・つ、付き合って欲しいの!」
俺は教師、お前は生徒だ。悪いけど・・・
そう言おうとしたが、炎の宿る瞳を前にして、言葉は勝手に胃袋目がけて落ちていった。
「ありがとう、お前の気持ち、すごく嬉しい・・・俺でよければ、いいよ」
こうして、本音に何も含まずそのまま出したのはいつ以来だろうか。
なあ、日比野。
お前の行動もたまには他人の幸せに繋がるんだな。
悪口は決して誉められる行為じゃないんだけど、結果オーライだからまあいいか。
そして、それが切っ掛けになるというのも何だか日比野らしいと思う。
もっと自分の気持ちに正直に生きてみてもいいかもしれない。
〜〜おしまい〜〜