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ワルグチ
【学園物 恋愛小説】

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ワルグチ-3

「置いてくよ、陸先生!」

そして廊下を歩いていた生徒とぶつかりそうになり、避けようとしてすっ転ぶ。
まるで漫画みたいに顔面から派手に転んだのを見て、俺はたった今海東が見せたあの表情を早くも忘れていた。

「おいおい、お前の方こそ大丈夫かよ」
「ただの事故、平気平気っ」

鼻が赤くなっているその顔は、いつも・・・以上に間の抜けた様に見える。

いつも明るいからそれを少し分けてほしいくらいだ。
俺も、海東みたいに転んでもすぐ笑顔になれるくらいにならなくちゃいけない。
たかがふられたくらいが何だというんだ。何年一緒にいようが、壊れるくらいならそれまでの仲だったんだよ。


・・・俺はそう器用じゃない。
情が移ったのにを簡単に切り替えられるものか。

別に尊敬なんざしちゃあいないが、日比野は異性に対しての切り替えは早かった。
俺の知る限りでも、同じ相手と一月続けばいいくらいだったな。
いっそあんな生き方をすればこうして傷を引き摺る事は無くなるのかもしれない。

だが、それに何の意味がある?

「なあ、海東。さっきの事だけど、他の奴には黙っといてくれないか」

俺の申し出にきょとんとした顔をする海東。

「話しても構わないんじゃなかったっけ、陸先生」
「気が変わった。ほら、一応俺のイメージは悪くないだろ。なのに電話で相手に悪口とか、良くないからな。だから秘密だ」
「秘密・・・かぁ」
「そうだ、俺とお前、2人だけの秘密な」

すると、海東は返事もせずそのまま走っていった。
目を丸くしたと思ったらさっさと校庭に出ちまったぞ・・・まさか、言い触らすつもりか?

まあ、別にいいか。
あれくらいの年頃は口に戸を建てられる程、落ち着きがある訳じゃないからな。
絶対に隠さなくちゃならない事じゃないし、誰にだってそういう相手はいるんだ。

聞かれたらそう答えておけばいいだろう−


しかし、俺の予想に反して部員達にいじられる事もなく、いつもと変わらず部活は終わった。
海東のやつ意外と口が堅いところもあるんだな。


「はい、じゃあ今日はここまでな。気をつけて帰れよ」
「「「「「お疲れ様でしたー!!!」」」」」」


一旦校舎に戻ろうとすると、横から袖を掴まれた。

「せ、先生っ」

一体誰だと思ったら、海東だった。
もじもじしながら俺を見ているが、微妙に目線が下であまり目が合わない。
もしかして合わせようとしていないのか、或いは合わせられないのだろうか?


「こっ、この後さぁ、時間ある?」


落ち着きの無い様子からして多分相談があるんだろう、と思った。
真っ直ぐ帰ってもまた余計な考えが頭を侵食するだろうし、別にいいか。


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