父と妹の想い-6
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大学から帰ろうとしていたところで、突然小夜からメールが来た。
いつも会いたい時や話したい時は自分から電話するが、小夜の方から誘われた。
喜んだのも束の間、誘いのメールでは無く・・・
¨いま、アパートの前にいる。会いたい・・・助けて¨
勇志は急いでアパートに向かっていた。
帰りが早い電車でなく今日に限って自転車で行った自分を恨みながら、ペダルを懸命に踏み込む。
つい先日、小夜を自分の家に連れてきて、体の関係を持った。
あれから二週間が過ぎて間もなく今年が終わろうとしている。
果たして二人の関係がどうなってしまうのか不安だったが、思っていたより環境の変化はなく、拍子抜けした程だった。
(待ってろ小夜、すぐ行くからな!)
ペダルを踏み込む度に、加速していくほどに小夜への想いが強くなっていく−
「小夜っ!!」
勇志は息を切らすのも構わずアパートの階段を上がると、ドアの前で座り込んでいる小夜を見つけた。
小夜は勇志に気付き、立ち上がるのと同時に飛び込んできた。
「・・・急にメールしてごめん。なんか、顔が見たくなっちゃって」
えへへ、と笑いかけてくる小夜が痛々しい。
勇志の腕に染み込む寒さが、長い間外で待っていたことを物語っている。
「んぅ・・・・・・っ、ちょ、ちょっと小夜・・・」
小夜は勇志の唇を奪う様に重ね、僅かな隙間を抉じ開け舌を差し込んだ。
急いで駆け付けてくれた勇志の体温を奪ってしまおうと、激しく舌を絡める。
「・・・勇志ぃ・・・」
「小夜、んは、はぁ・・・ごめん、ちょっと待って、苦しい・・・はぁっ、はぁ」
縋り付いてくる小夜を何とか離して、勇志は深呼吸した。
軽く酸欠を起こしかけて眩みかけた頭がようやく息を吹き返す。
「・・・・・・・・・」
それきり、小夜は何も言わなくなってしまった。
何故自分に会いたくなったのかと勇志は尋ねたが、意味ありげに、申し訳無さそうに笑うだけだった。
「・・・中、入ろう」
こくっ、と静かに頷いた小夜を立たせて一緒に家に入る。
入ってからずっと、小夜は勇志に抱きついたままだった。