悔し涙が身に染みる……。-17
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「あ、あの……、さっきなんですが……、一〇七号室で布を……えと、店員さんがもっていっちゃって……」
たどたどしく説明する佐奈に、店員は首をかしげながら頷いているのが見えた。
志保は急いで向かうと、彼女を庇うようにして言う。
「先ほどお冷を届けてもらったんですが、その時換えのショーツを店員さんがゴミと間違えて持っていってしまいました。返していただけませんか?」
「え?」
店員と佐奈の声が被る。志保も恥ずかしいのか顔を赤くしていた。
「は、はい……えと、これですか?」
店員はお盆に載せた布切れを見せる。
「ご迷惑をおかけしました」
模様や何か細かく覚えていない志保だが、ショーツを持っていかれるようなことが早々あるわけもなく、布を掴むと、佐奈の手を引っ張って戻る。
部屋の前で幸一が待っていた。
よくよく思い出してみれば、彼の命令に便乗する形で後輩を助けに行けたわけだ。
「ねえ、幸一君……」
「何?」
「もう帰りたい」
「ああ……」
彼はまだ冷静なほう。そのせいか、そんな言葉がぽろっと出てしまう。
今の状況ならそれに賛成してくれる人も居るだろう。
栄治、達郎、宏美と自分達三人を加えれば六人。たかがカラオケの採点機能で出された数字よりも確かな数字。これで革命を起こせば、このくだらないゲームも終る。
「ねえ、皆に止めるように言わない?」
「出来るかな?」
「だってあたし達のほうが人数多いでしょ? 大丈夫だってば!」
「そうですよね? 私ももう帰りたいです……」
佐奈もそれに同意したのを見て、幸一も頷く。
「わかったよ。そう言おう……」
「うん!」
志保はやけに暗くなった部屋のドアを開けた……が?
むんとした臭い。先ほどまでは部屋にいたせいか気付かなかったが、改めて入りなおすことでわかる。
酸っぱさと潮っぽい臭い。汗や埃などではなく、明らかな性臭に眉を顰める志保。
「……んっ、やぁ……あん……」
押し殺した声と、上下するシルエット。
じゅず、にゅる……ちゅぽ……ちゅ……。
ぱちん、ぱちん……。
粘ついた水の音と、何かのぶつかる音。
「あ……だれ?」
上ずった声は宏美のものだが、何をしているのかはおおよそ見当が着く。
「電気、つけるね……」
だからこそ、志保は尋ねた。
「や、まって……少し待って!」
焦る宏美の声に続き、衣擦れの音がしばし……。
しゅ、じー……、くしゅ、くしゅ……ぱち……。
「いいよ……」
「そう……」
ぱっと明かりが照らす室内。
宏美は耳を隠す髪をかきあげ、スカートを直しながらも和志の膝の上に座っている。
達郎の上には奈々子が居り、先ほどと同じく笑顔でいるが、潤んだ瞳と高潮した頬は尋常ではない。
聡は一人陰茎を露出させながらグラスを煽っているが、それは常に勃起したままだ。
そして、栄治はというと、先っぽどころか陰茎が怪しく濡れており、白い筋が見えた。
「遅いからまた電気消す命令してたの。んふふ、大丈夫。何も無いから」
そう言いながら丸められたティッシュを隠す忍。彼女は口もとをぺろっと舌で舐めると、栄治の傍から離れた。
「何してたの?」
震える声を出す佐奈。雰囲気、所作からある程度のことは予想できる。
「何もしてないよ? ただみんなじっとしてただけだよね? ね〜、宏美ちゃん」
「え? あ、うん……、そうよ……」
宏美はぷいとそっぽを向きながら言うが、その態度が佐奈の悪い予感を見抜く。
「ちょっと栄治君! 何してたのよ!」
たまらず佐奈は彼に駆け寄り、きつい口調で言う。
「何もないって……」
「じゃあ……!」
彼女は露出された包茎チンポを掴むと、強引に剥く。
「いた……い」
男達は自分のことのように目を背ける。
むき出しになったピンクの亀頭は白く泡立つものがあり、ご丁寧にも鈴口からじゅくっと精子の残りが出てくる。