「闇に咲きぬ」-4
「分かった、動かすよ…」
私は少しづつ腰の動きを早める。
「はぁ…あんっ」
私が腰を動かすたびに姉が、姉の背中の牡丹の花が揺れる。
白い背中に赤い牡丹は対照的で、鮮やかだった。
ずちゅ…ぬちゃ…
結合部分から聞こえる音も徐々にピッチがあがってくる。最初あった抵抗もだいぶなくなってきたようだ。
「はぁ…ぁん…竜之介…竜之介…いい…」
姉の体が熱を帯びてきた……気がつけば私の腰の動きにあわせて姉も腰を動かしている。
私は片手をつき、もう片方の手で姉の乳房を後ろからつかんだ。
「ひっ…ぁ…あん…そこ…ダメぇ…」
私は姉の背中に体を密着させ、そのまま体を動かし続けた。
姉とずっとこうしていたい、という気持ちもあったが、限界が近い。
私は姉から体を離し、再び姉の腰に手をあてた。こうすれば、月明かりでも姉の入れ墨はよく見える。
「…百花…出すよ。」
「あぁ…竜之介…出して…膣内に…竜之介をちょうだい…」
「いいの?」
「大丈夫、大丈夫だから…お願い…」
私は自分の欲望に体を任せ、何度も姉の奥深くに肉棒を突き立てた。
ずにゃ…パンッ…ぬち…
結合部の水音に姉の尻と私の腰がぶつかる音が混ざり、その間隔がどんどん短くなっていく。
ずちゅ…パンッ…ずに…ぶちゅ…パンッ
「あぁ、もう駄目だ!出るっ!」
私は姉の最深部でありったけの精を放った。
「あああっ…入ってる……竜之介のが…何度も…奥にぃ…」
「くっ…ぅ」
一滴残らず姉の中に出し…私はゆっくり肉棒を引き抜いた。
とさっ…
同時に姉が前に倒れ込む。わずかに開かれた足の付け根から、処女の証である血と、今私が放った精とがこぼれ落ち、布団にしみを作っていく。
「はぁ…ふぅ…」
姉は目をつぶって肩で息をしている。おそらく布団に広がるしみなど気づいていないだろう。
「姉さん…ありがとう…」
「……ん。こちらこそ…ありがとう…」
「……」
「……」
二人の間を沈黙が流れる。
先に口を開いたのは私だった。
「…じゃあ、誰かが来る前に部屋に戻るよ。」
「うん…。……ねぇ、竜之介。」
「ん?」
「今日だけだよ…」
「…ん。」
「…じゃあ、おやすみ。」
「…姉さん。」
「何?」
「今日は、一緒に寝ても、いいかな?」
「え?だ、駄目よ。お父さんに見つかったらどうするのよ。」
「どうせ酔いつぶれるよ。仮に見つかっても酔って入ってきてそのまま寝たことにすればいい。半分は事実だし。」
「…そうね。じゃあ、昔みたいに一緒に寝ましょうか。」
「うん。ところで姉さん…シーツ…」
「えっ?あ…きゃっ…何これ?」
その後、シーツを取り替え、血と精液をたっぷり吸ったシーツを押入に隠し(後日こっそり捨てた)、年のために服を着、新しいシーツをかけた布団に横になった。
姉に腕枕をすすめると、本当に男らしくなったわね、と言って頭を預けてきた。
私は姉の髪の香りに包まれながら深い眠りに落ちていった。
−3−
結局姉との秘め事はその一回だけで、それからは何も無かった。
しかし、今でも目を瞑ればあの鮮やかな背中を思い出すことができる。
姉は私との情事の後、しばらくして緋川組の組員と結婚した。
実はお互いずっと惹かれあっていたのだが、身分の違いから踏み切れずにいたらしい。父も跡継ぎは私と決めていたのでさしたる反対もなく、二人は結ばれた。
寂しさもあったが、私にとっては兄のような存在だったから、大歓迎だった。
私が十三代緋川組組長として就任すると同時に姉は別居を構え、組に直接関わることはあまり無くなった。
私は父の跡を継いで組をもりたててきたつもりだ。若いから、となめられたり、困難はあったが、私は困難にくじけそうな時には鏡で自分の背中を見るようにしている。
私の背中には、姉の意志があった。
大輪の牡丹がひとつ…そして、その牡丹の花を抱くようにしてこちらを睨み返すを巻く竜が一匹。柳田玄斎を探し出し、事情を話して彫ってもらったものだ。
牡丹は私にとって姉であり、組である。竜は言うまでもなく緋川竜之介…私自身である。
私はこの竜のように、これからもこの組を、姉を…守り続ける。
いつか誰かに、全てを託す日まで。