オカシな関係3-8
「じゃあね、…俺の嫁になってよ」
美佳ちゃんがパクパクと口を動かす。
なにを言っていいのかわかんなくなってる。
「……。」
ぺち。
俺はまた額を叩かれた。
「……そ、そ、そ、ソレとコレは話が別なの!」
ようやく言葉を見つけてきたらしく、少し間をおいて言った。
美佳ちゃん、セックスの最中より顔が赤いよ。
まあ確かに別の話。繋げるのはちょっと姑息か。
でも、俺は嘘は言ってない。
「分かった、次はコンドウさんつける」
俺はベッドからおりて机の引き出しを開けた。
背後で美佳ちゃんはぶつぶつつぶやいている。
…なに?今の。今のがプロポーズなの?…ひどい、酷すぎる…嘘だ… とかなんとか。
わかった。わかった。
ついでみたいに持ち出したのは確かに悪かった。ちゃんと仕切直すよ。いつか。
そんなことを思いながら奥から箱を取り出す。いつもの菓子の箱。
それを美佳ちゃんに渡した。
「? 今日はお昼にお菓子、もらったわよ?」
「いいんだよ。開けて」
中を見た美佳ちゃんが俺を見つめる。
「これ…」
いつか渡すつもりで用意していた指輪。
細めのリングで、小さなアメジストが付いている。安物だけど。
「サイズはこっそり、おばさんに訊いたんだよ。だからたぶん合う筈。あ、こんな展開は考えてなかったから、形式ばったものじゃないからね。渡しそびれててね。……だいたいそれ誕生石じゃないし」
俺が立ち寄った雑貨店に置いてあるヤツの中で似合いそうって思っただけ。
雑貨店は時々店閉めてから行く。おもしろいし、いろいろ参考になるから。
ちゃんとした宝石店に行かないと美佳ちゃんの誕生石は無理。サファイアだもん。
「そういうのは知ってるんだ」
「ん。まあ、ウチは製造業兼サービス業だから。行事とか儀式関係はねー」
「ありがと」
美佳ちゃんが目を右手で擦って笑った。