オカシな関係3-3
「美佳ちゃん。いいんだよ、もういいよ」
俺は美佳ちゃんに毛布を掛けた。
「…良くないよ…」
起きあがって毛布にくるまった美佳ちゃんは俺に背中を向け、小さな声でつぶやく。
「私、あんたにもらってばっかり。なんにも返せてない…。涼ちゃん言ったよね、これは通過儀礼だって。私はね、楽になりたいのよ」
俺はなんだか無性に腹が立った。
「俺は! ……もらったから返さなければならないなんて考え、嫌いだ。…少なくとも俺は、見返りが欲しくてやったことなんか一度だってないよ。だた、美佳ちゃんの心が欲しいし、身体だって欲しい。だけど、そんなもん、あげたの返すのって話じゃない。乱暴にして一度きりの関係なんか、俺、やだよ」
美佳ちゃんは自棄になっただけで、本当にそんな風に考えているとは思わない。思わないけど。
俺の『押しつけ』だというなら『お返し』なんかいらない。
俺の立つ瀬がないじゃんか。それじゃあ。
「ごめん…。ごめんね」
美佳ちゃんがぽろぽろと涙をこぼした。
その涙はとても綺麗で。
毛布から覗く華奢な肩のラインが誘惑する。
「いいよ。いい…」
そういいながら、ひとつ思いついたことがあった。
馬鹿馬鹿しいと思わないでもなかったけど、打つ手もないことだし。
女じゃあるまいし。
俺は立ち上がって、シャツを脱ぎ捨てた。
「涼ちゃん?」
ベルトに手をかけ、躊躇無くズボンも下着も床に投げてベッドに腰掛けた。
「野郎の身体なんてこんなもん。まあ、ちょっと下品になってるけど、仕方ないよね、美佳ちゃんいるし、さ」
俺の身体はきっちり反応を示している。
美佳ちゃんは視線を外して真っ赤になっていた。
「は、恥ずかしくないの?」
「じゃー、毛布に入れて入れてー」
「やっ…」
俺は美佳ちゃんの握っている毛布を掴むと横に並んで一緒にくるまった。
美佳ちゃんはビクリと身体を強ばらせたけど、また毛布の端を握らせるとそれ以上の拒絶反応は示さなかった。
ちらりと見えた白い身体が毛布の中で温もりを発散している。
俺だって実のところ、ものすごく緊張してる。
けど。
俺の緊張が見えれば美佳ちゃんはますま怯える。
俺がビビッてちゃあ、話にならない。
虚勢だって張る。
なけなしの意地をかき集めてハッタリもかましてみせる。
普段通りのテンションを装う。
「美佳ちゃんの身体、すごくあったかい。」
そういって頬にくちづける。
俺の左腕に触れる美佳ちゃんの右肩はもう震えてなかった。