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今日の朝日が身に沁みる
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今日の朝日が身に沁みる-3

***
 夜中、というよりは明け方午前四時を回った頃だった。
 一軒の家から明かりが漏れる。
 蛍光灯の白い光が椅子に座る男を照らす。
 若いというほどではなく、初老といった年頃だろうか。
 彼は渋い顔で写真を見ていた。
 そこには無邪気な顔で笑う男の子がいる。
 ベッドから半身を起こし、腕には点滴のチューブが伸びている。
 血色も悪く、腕も細く、頬もこけている。
 その笑顔は痛々しいとしか言いようが無い……。
「あなた!」
 そこへ女が血相を変えてやってくる。
「なんだいこんな時間に……」
 男は女をたしなめるが、彼女は鼻息を荒くさせ、嬉々とした表情で男に歩み寄る。
「今病院から電話があったの!」
「そうか……」
 来るべき日、時がやってきたのだろう。そう悟った男はがっくりとうなだれる。
 写真にある子共は彼らの息子。小さい頃に難病を発病させ、小学校にもろくにいけずに病院生活。時を重ねるごとに衰え、最近は見るのも辛くて見舞いにも行きたくない。治療という延命術で永らえているが、根本的に解決するためには移植を待つしかない。
 もちろん彼は移植を名乗り出た。妻もだ。
 だが、運命の神は残酷であり、二人はその資格すら与えられない。
 妻に「お父さん、最近仕事いそがしいんだね。がんばって」と聞かされ、涙が出た。
 今は後悔で胸がいっぱいだった。
 まだ幾分元気のある彼を見つめて感傷に浸り、現実から目を背けている自分。
 何が父親なのだろうか?
 そう思うと、胸が熱く、締め付けられていく……。
「ドナーが見つかったのよ!」
「ドナー……?」
 一瞬なんのことかわからず、彼は目を丸くしていた。だが、先ほどから涙する妻は、どうにも喜んでいるようにしか見えない。
 つまり……、
「そうか、助かるのか!」
 東の空はうっすらと赤が見え始める。
 日々悲しみに明け暮れたというのに、今日の朝日には希望が溢れ……、心に……、身に……染みる想いだった……。
***
「――三七七号、出ろ……」
 さてさて今日も始まるわけだ。
 まずい飯を少しでも美味くするためには、空腹が最高のスパイスって言うからな。
 今日も御勤めに行ってきますよ……。
 男が独房を出るころには日が昇り始めていたが、高い窓からは朝日は、差し込まず……。


今日の朝日が身に沁みる 完

お題は見てのお帰りに・・・。から十一月のお題を借りて……。


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