最後の崩壊-2
「どうしたの?」
「ああ・・・くぅっ・・・ト、トイ・・レ」
「ん?何?もっと大きい声で言ってごらん」
「はっ、はっ、ふ・・んんん。トイレ、トイレに、行きたい・・・・です」
熱くもないのに体中から汗が染み出て流れ落ちる。
また巨大な波が襲ってきて声が出てしまう。
「わかった。ほら、ちゃんと立って」
蒼介はブルブルと震えだした僕を無理矢理立たせ、トイレと思われる個室へと誘導する。
その間も僕のお腹は大きな音を立てて暴れだし、トイレへの歩みを妨げる。
ほんの三歩歩くたびに僕はその場で立ち止まって荒れ狂う波が収まるのを待つのだ。
ようやく蒼介の元へたどり着き扉を開けると、そこには全く目隠しの処理が施されていない透明なアクリル製の部屋があった。
床より三段ほど高く作られていて、そこがトイレと判断できるのは中央にあいた穴だけだった。
「ここがトイレだよ」
当たり前のように言われてパニックになる。
朦朧とする意識の中でこの異常な状況を受け止めるには今の僕にはとうてい無理だ。
「このホテルはそういう行為がしやすいように作られているんだよ。さっきのベッドの柱にあったリングもそう」
淡々と今の僕の切羽詰った状況を無視して説明をする蒼介。
「あ、ありが・・とう、ござい、ます・・・で、でも・・・まさ・・か、ここで?」
「え?だってトイレはここしかないよ。風呂場でするわけにはいかないだろ?」
「そん・・な・・・・・・ああああああ!!!いっ・・・いたっ」
「さ、実沙希。この何もかも丸見えのトイレでお腹の中の物を全部出すんだ。これは命令だよ」
驚愕の事実を突きつけられて血の気が引いていくのがわかる。
そんな・・・
こんなところで・・・
でも
命令に背いたらまたお仕置きだ
でも
でも
ああああああ
頭がおかしくなる!!!!
自分が排泄するところをまさか他人に見られるだなんて誰が想像できるだろうか。
僕はもうダメになるかもしれないという恐怖感が襲ってくる。
震えはピークに達してガチガチと歯が当たる音が聞こえる。
ゆっくりと中央の穴を跨いでしゃがむと床まで透けて見えて足元からふわっと鳥肌が立った。