龍之介・七-5
「さあさあ座って。お腹は減ってる?」
こっちが返事する前に料理を皿によそい、俺の前に置いた。
・・・久々に見たけど変わらず白い。
「匂いだけは普通なんだよな」
「ちゃんと食べられるから平気だよ。はい、あーん」
スプーンで一口掬って差し出してくる。
あまり気は進まなかったが、せっかくなので真っ白なシチューを食べた。
「・・・甘い」
初めて食わされた時から一貫して変わらない。
「味は変えられないのよ。どうしても牛乳入れて、砂糖は欠かせないの」
はっきり自分の気持ちを言わないくせに、変なところは頑固だった。昔から・・・そうだ。
葵は寂しくないんだろうか。転勤が決まってからそういう類の話をしなかった。
不自然に触れない感じではなくて、たまに話してそれなりに触れるくらいだった。
「もういらない、甘過ぎ」
「こら、ちゃんと食べなさい。最後の晩餐だぞ」
「だったら食べやすくしてくれよ・・・」
かけがえの無い時間が過ぎていく。でも、だからって特別な事をする必要も無いと思う。
これで終わりじゃあ無いんだからな。
葵は俺の姉さんであり、きっと離れられない存在だ。
(龍くん、私だって寂しいんだよ・・・でもいつかは離れなきゃいけないの、家族だから)
大学合格を聞いた日、唇を噛みしめながら葵が言ってた言葉が頭を過る。
葵は、変わらない。
今だってきっと、俺に本当の気持ちを見せず、普通の顔をしているんだ。
俺の為だと思って・・・
「・・・葵・・・」
「龍くん?なに・・・きゃ!ちょ、ちょっとっ!!」
我慢していたものが噴き出して、手を指先まで熱くさせた。
向かいに居た葵を抱きしめて、唇を奪う。
嫌だ。葵を、姉さんを残して行きたくない。
まだ・・・何もしてやれてない、償いは終わっていない。このまま行くなんて嫌だ、嫌だ。
「駄目よぉ・・・こんなの、いけない。駄目だってばぁ・・・」
結局俺はこんな事しか出来ないのだろうか。嫌がる姉さんを、葵を抱く事しか・・・
ただ単に自分が傷を負わせた過去に目を背けたいが為に、姉さんに欲望をぶつけるしか出来ないのか。
唇を抉じ開けて舌を差し込み、唾液を啜りながら乳房を愛撫していく。
嫌がるわりに抵抗しないのは、力では適わないからだ。長年に渡る強制的な行為で、葵はすっかり抗う気持ちを奪われてしまった。