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やさぐれ娘は屋上で笑う
【学園物 恋愛小説】

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#01  邂逅-9

「――萌!良かったわ。携帯電話に何度、連絡しても繋がらないんだもの……」



闖入者の声に私は内の不快感を隠しもせずに昇降口へと目を向けた。

やはり、そこには声の主、姉の香織がいた。

シワ一つないセーラー服をピシッと着込み、腕を組んで私を見下ろすショートボブの女だ。もちろん、黒髪で化粧一つしていない。そのくせ、身長は私よりも小さいくせに異様な存在感を誇っている。私に似た(いや、私が似たのか?)真っ白な肌に、秀麗な鼻梁と口元。しかし、瞳だけは父似の私と違い、母と同じクリクリとした垂れ目で、可愛らしい。

学業優秀、スポーツ神経抜群、家柄はよく、器量も気立ても良い完璧女だ。

出涸らしだってことぐらい、充分に自覚しているけど――それでもこのカマトトぶる姉は嫌いだった。そりが合わない。

そのくせ、向こうは私に嫌われている自覚がないのだから、最悪だ。

いまだって、私が着信拒否していることに気付いていないんだ、この天然め。

私は一つ、大きく舌打ちをすると視線を姉から高崎一〜三号に戻した。



「――おい、付き合ってやるよ。さっさと行こうぜ?」

「え?あっ……ちょっと、萌ちゃん?」

「行かねぇの?」

「い、行くよ。でも、いいの?」



歩き出した私へ高崎三号が背後で「待ちなさいっ!萌!」と叫ぶバカ姉を指差して訊ねてきたが――知ったこっちゃねぇ。

どうせ、何を話したって分かり合えないだろうし、私が一方的に不愉快になるだけだ。



「…………ふんっ」



私はチラリと香織を見た。

バカ正直に靴に履き替えようと、もたついている。

本当に、頭がおかしいんじゃないのか?そんなに『一般常識』やら『校則』やらが大事なら私になんて金輪際、構わないで欲しい。

妙なイラつきが脳で疼き、姉から視線を外すと私は校門へと向かった。




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