#01 邂逅-2
そりゃ、ウチのクラスにだってワルそうなのは何人かいるが、私はそういった類の不良とは気性が違った。物を壊したり、他人に迷惑をかけたりすることになんら魅力を感じないのだ。
しかし、逆に言っちゃうと……それ以外のことは大抵している。
セミロングのウェーブをかけた髪は金に染めているし、ピアスはしている、スカートは超ショート、おまけに喫煙と飲酒。
校則違反のフルコースだ。
ん?――いや、髪を染めるのは『健全な学校生活の妨げになる服装』ではないから良いのか?
……まぁ、いい。そういった感じだ。
なのに、なぜ、学校側も私を停学なりなんなりに処分しないのかといえば、幾つか理由がある。
一個上の姉、香織(カオリ)が生徒会長という職権を乱用して私を弁護していることが一つ。
両親がSTCという貿易会社の二代目社長とその夫人――つまり、私は良いとこのお嬢ちゃんというわけだ――で、学校側も気を使っている、というのが一つだ。
別に私が頼んだわけじゃないのに、堪らなく恩着せがましい連中である。
そりゃ……、こんなまるっきしマンガチックな、反抗期の発想が幼稚なのは百も承知だが、だからといって止める気もなかった。
ムカつくんだ、周りの全部が。こうでもしなきゃ、憂さが晴れねぇ。
キーン、コーン……
そんなことを思ってると授業開始の鐘音を模した電子音が学校中のスピーカーから流れてきた。
ベージュ色のスクールバックからケータイを取り出すと時刻は十時四十分――三時限目が開始されたのだ。
私は今日の生活指導は『遅刻の注意』で、校門を潜ったところでビルマに捕まったのが、二時限目が始まってすぐだったから、たっぷり一時間近くも説教を喰らっていたこととなる。
ビルマめ……。四十過ぎの小太りの身体にワンサイズ小さいスーツを無理矢理着込んだあの豚女が!豆でも貪ってろってんだ。遅刻三十回記念だからって気合入れすぎなんだよ、あのクソアマ。
はぁ…………。そういえば、次の授業は体育だったな。いまから着替えたところで、もう間に合わない。
――。――っうし、サボろう。
私は一瞬の校内を徘徊するビルマ及びその手下の教師共と顔を合わせるのを避けるために、屋上へと向かった。
その先で、私は『ある意味』運命的な出会いをするのだが……、そんな予感など微塵も覚えていなかった。