#01 邂逅-18
ふと私はカバンの小物入れからマッチ箱を取り出した。岐島から昼間、貰ったものだ。
すると、確かに筆記隊で『パブリック・シークレッツ』と書かれてある――ように見えた。
パブリック・シークレッツ?『公然の秘密』ならオープン・シークレットじゃないのか?
いや、それよりも……これは確定的な証拠が出てきたぞ、おい。
私は唖然と、口を半開きにさせた。
横では皐月さんが疑問符を浮かべている。
「あれ?知ってたんじゃあ……」
「し、知るわけねぇだろ!なんつードッキリだ、これ!?カメラはどこだっつうのっ!?」
「うっそ。やっば……」
皐月さんの顔が見る見る青くなっていった。ハンドルを持つ手がプルプルと震えている。
見ると車は奇妙な蛇行走行を開始していた。
――私も青くなった。
「さ、皐月さん!前っ、前っ!」
「はっ――」
「はっ、じゃねぇ!危険運転で捕まっぞっ?ジャガーで危険運転って超ダセェよ!?」
私は身の危険を感じたために言葉を選ばず、罵った。
一方、皐月さんはすぐに我に返り、ハンドルを握り直し、安全運転を再開している。
が、やっぱり、表情は暗かった。
「うっわ〜……どうしよ、萌ちゃん?」
「知らん。…………たっ――ただ、うな垂れて前方不注意だけは止めて下さい!」
「運転教官!?」
「――で?どうしたんだよ?」
「聞いてくれる?」
「聞かなきゃ事故るだろうが!」
「聞いて聞いて。そして、助けて!」
「…………」