#01 邂逅-11
「…………」
「ははっ……当てが外れたねぇー。それじゃ、坊ちゃん、私はそろそろ帰るわ」
「なっ!?」
「だって、おまえらさ――、つまんねぇーだもん」
「……。ちっ」
高崎一号の顔色が変わった。
さっきまでのヘラついたのではなく、本能的な粗野なヤツだ。
一号が手に持ったグラスを足の低いテーブルに置くと二号、三号に目配せした。
頷いた二号がカラオケの機械の電源を落とし、三号が出入り口の黒塗りの扉の鍵を閉め、室内灯を暗くする。
それを確認した一号が再び、肩に手を伸ばしてきた。
今度は払っても強引に私の肩へ触れてくる。
ギュッと、男の力強い握力で右肩を掴まれた。
「萌えちゃーん。そういう、意地悪なのはどうなのよ?アレ?ツンデレってヤツ?」
「はぁ?」
「もっと、仲良くなろーぜ?なぁ――」
私の肩を抱き寄せると一号が間抜け面で唇をスッと寄せてきた。
ムカッときた。
私の肩を握るその手を取り、自分の世界に浸っているバカに背を向けると反動をつけ、そのバカの腕を捻った。
ついでに足でも補助をしてやれば、女でも簡単に男をひっくり返すことができるのだ。
ヒュッ……
「――ぅわ!?」
ガシャァン……、と皿やボトルケースをひっくり返して、一号はテーブルの上へと転がり落ちた。
制服を酒や料理で汚し、もんどりを打つ一号へ私は吐き捨てるように言ってやる。
「勘違いヤローが。身の程を知れってんだ。自分より、女が下だと思うんじゃねぇ!」
最後に「けっ」と付け加えると私は出入り口へと向かい、歩を進めた。
しかし、その行く手は二号、三号に阻まれる。
二人とも、私よりも首一つ分ほど背が高い。
だが、それほど脅威には思えなかった。