#01 邂逅-10
「――いや〜、萌ちゃんと遊べるなんてラッキー!どう、ここ?よくね?」
高崎一号に案内されて来たのは会員制のクラブ。もちろん、会員は一号だ。
あまり治安の良いとは言えない地域の入り口に建てられた三階建てのビルディングの地下部だった。
どうでもいいことだが、一階がホストクラブ、二階がメイド喫茶、三階がバー……このビル主はどういう了見なんだ?
薄暗い照明のそのクラブは一般に、いつも私が出入りしているところとは違い、妙に落ち着いた雰囲気だった。入店するとすぐ黒ベストのしっかりとした格好のボーイに案内され、個室へと通された。
どちらかと言えばクラブというよりはカラオケといった方が良いかもしれない。
室内の装飾も、出てくるものも、店員もみんな豪華なカラオケ――うん、しっくりきた。
んで、部屋に入って、すぐにシャンパンボトルとフルーツやら、カルパッチョやらが大きな皿にこじんまりと盛り付けられて出てきた。
シャンパンは――詳しくはないが、少なくとも五千だ、一万だのモノではないし、第一、高崎一号はこの店の上客なんだろうけど、未成年だろうが、学校の制服を着ていようがお構いなしだ。
本当に大丈夫か、この店は?
現在、高崎二号三号がカラオケを(二人で)熱唱している。おえ、マジでキモイ。
そして、バカみたいにフカフカなソファーに座った私の隣で高崎一号がフルートグラス片手に訊ねてきたのだ。
私は当然のように肩へ伸びてきた高崎一号の腕を払う。
「ここ?普通じゃねぇの?」
「ふ、ふつう?」
「……。そこらの女でも連れ込めばきゃー、すごーい、とでも言ってくれたんだろうけどな。残念、私はこう見えてお嬢様なんだわ」
私はそこまで言うと高崎一号へ軽蔑の眼差しを向けた。
こいつらと言えば最初っから下心丸出しすぎなんだよ。いっそ、清々しいほどだ。
だけど、私はチャライのも嫌いだが、親の七光りはもっと嫌いだった。
しかも、親の金で女を接待してモテた気になるなんてのは、最悪中の最悪――眼中にあるわけがない。
香織から逃げるのに使ったから、ちっとは付き合ってやったが、もうそろそろ頃合だろう。