アップルパイ-5
〜〜〜〜〜(Mizuki's Side)〜〜〜〜〜
「おい耕太、待ちなさい、話は最後まで」
私の叫びも、力なく足を引きずりながら部屋に戻る耕太には届かなかった。
全く、ちゃんと話を聞けば、へこんだまま寝なくても良かったのに。
料理に興味の無い弟が急に目覚めた切っ掛けはあれしかない。
好きな人にあげる為、それ以外に無いでしょ。
だって私もそうなんだもん。
あげたいと思ったのも同じだし、おそらくうまくいかなかったのも同じだと思う。
「でも、まさか好きな物まで同じなんてね・・・」
血の繋がりを感じる様な運命のイタズラに、私は思わず苦笑いしてしまった。
自分と同じ道を辿ってるっていうの・・・?
もしそうなら安心してほしい。
次は、うまくいくから。
そして、長い付き合いになるから・・・
「頑張れよ、耕太。美味しく作る事もそうだけど・・・大事なのは、気持ちだから」
私はもう布団に突っ伏してるであろう弟に向けて、そっと呟いた。
今は面と向かってまだ言えなくても、いつかちゃんと伝えてあげようと思う。
〜〜おしまい〜〜